介護管理職から本部人事へ|採用・労務・制度運用の経験を分けて整理

まっく部長
中小企業診断士 元職業紹介責任者 元医療介護企業 人事責任者
公開日:

職業紹介責任者としてケアマネジャーなど資格職の職業紹介に携わり、 医療介護企業の人事責任者として採用・人事制度設計・労務管理を担当。 介護管理職の転職・採用・キャリア情報を、 公的資料と採用側・紹介側の実務経験をもとに執筆・編集しています。

介護管理職から本部人事を目指すなら、採用や職員対応のうち、自分が実施・提案・判断した工程を分けて整理してください。人事の工程と自分の経験を照合する表へ進むと、応募先へ伝えられる経験と、先に確かめる支援を分けられます。

目次

本部人事のどの仕事へ応募するかを先に決める

厚生労働省のjob tagでは、人事事務に採用・配置・異動、能力開発、勤怠や給与、福利厚生の事務などを挙げています。「施設長として人に関わる仕事をしてきた」という説明から、応募先で任される工程へ絞っていきましょう。

出典:厚生労働省 job tag 人事事務

事務系職種の職業能力評価基準では、人事・人材開発と労務管理を分けて整理しています。導入マニュアルにも、一人で担当する場合と複数の人や部署で分担する場合が示されており、職務の区分をそのまま応募先の組織図とは考えられません。

出典:厚生労働省・事務系職種の職業能力評価基準、厚生労働省・職業能力評価基準導入マニュアル

ニチイ学館の社員紹介にも、労務相談、勤怠・給与に関わる実務、人事施策の企画・運用という異なる仕事が載っています。これは掲載社員の担当例であり、同社の現在の募集条件や、すべての介護本部に共通する担当範囲を示すものではありません。

出典:ニチイ学館・働く社員インタビュー(HR)

採用、労務、教育のどこへ進みたいか決まっていなければ、本部の仕事を比較する記事で希望する機能を選べます。この記事では人事を選んだ後に、経験した工程と未経験の工程を分けていきます。

採用面接の経験を、工程と決裁に分ける

面接を担当した経験は、質問、評価の記録、現場の見解の報告などに分けて説明できます。採用人数の計画や条件提示、最終採否を誰が決めたかも添えれば、「採用全般」という広い言葉に頼らず担当を示せます。

採用の工程自分の経験として確かめること別に確かめる判断
要件の整理・採用計画現場の欠員や必要業務を整理して提出したか、人数や予算の案を作ったか採用人数・予算・募集条件を承認した人
応募対応・面接日程調整、質問、評価記録、面接結果の報告のどれを行ったか評価基準を決めた人と、最終採否の決裁者
条件提示・受入れ承認済み条件の説明、入職日の調整、受入れ準備を担当したか提示条件の変更や配属を決めた人
経験を思い出すための自作表です。自分が担当した工程を確かめてください。

厚生労働省は、適性・能力に基づく採用基準をあらかじめ明確にし、客観的に評価する選考方法を示しています。面接経験を書く場合も、職務に必要な点を何で確認し、どの基準で報告したかを説明し、応募者の家庭事情や病歴を実績の材料にしないでください。

出典:厚生労働省 採用選考の具体的な方法

本部人事へ実務と決裁を分ける。自分が担当した実務:面接・事実確認・提案など実施した工程を具体的に書く。他者が決めたこと:採否・条件提示・制度の判断上司や本部の決裁を分ける。未経験の工程:入職後の担当範囲と確認者を聞く支援が不明なら受諾を保留

人事の工程と自分の経験を照合する表

次は、採用面接を担当したAさんと、勤務相談を受けていたBさんの架空の完成例です。実在の求職者や著者の支援事例ではなく、経験を工程へ分ける方法を示しています。

本部で任される工程自分がした実務他者が判断した部分未経験と確認する支援
Aさん・採用要件の整理と面接一施設の欠員と必要業務を整理して提案。面接を実施し、評価を本部へ報告採用人数・予算・募集条件・最終採否は本部が決定法人全体の採用計画は未経験。入職時に求める工程と計画の確認者を聞く
Aさん・入職受入れ承認済みの入職日に合わせ、現場の受入れ担当と予定を調整配属と雇用条件は本部が決定条件提示の担当経験はない。説明範囲と確認手順を聞く
Bさん・勤務相談と勤怠確認相談を受け、勤務実績の事実を確認して上司へ報告。記録の不足を担当者へ確認規程の適用、給与計算、例外対応は本部が判断給与計算は未経験。相談受付からどこまで任され、誰が判断を確認するかを聞く
Bさん・既存制度の運用補佐決められた申請手順を案内し、不足書類を本人へ確認申請の承認と制度の変更は上司・本部が担当制度企画は未経験。まず既存ルールの運用を担う職務か確認する
担当した工程を「実施・提案・判断・補佐」に分けて説明する、独自の整理表です。

自分の表では、役職の在任期間と対象施設をそろえ、その期間に行った仕事だけを記入します。別の時期に上司が持っていた権限を足さず、判断した記憶が曖昧な工程は確認待ちとして残してください。

架空例1 面接経験を採用計画の経験へ広げない

Aさんは、当時の担当業務と本部への報告手順を思い出し、面接の実施、要件の提案、採否の決定を分けました。応募先の説明にある「採用担当」と比べると、面接運営は説明できますが、採用計画まで任されるかは分かりません。

そこで「入職時は面接運営が中心ですか。それとも人数・予算を含む計画から担当しますか」と確認します。計画を担う場合は、案の作成者、承認者、未経験部分を確認してもらう相手も尋ねてください。

記入例|Aさんが書ける経験の例

一施設の採用で、現場の欠員と必要業務を整理し、面接と評価の報告を担当しました。採用人数、募集条件、最終採否は本部が決めており、法人全体の採用計画は担当していません。

回答が「当初は面接運営を担当し、計画は上司と作る」で、確認を受ける場面も具体的なら、面接と報告の経験を中心に応募書類へまとめます。回答が「計画から単独で任せる」で支援が決まっていなければ、その工程は未経験と伝え、役割の調整や別の職務を検討してください。

架空例2 職員対応と労務・制度運用を区別する

Bさんは、勤務相談で行った受付、事実確認、報告と、上司から返された判断を整理しました。相談に対応していた事実はありますが、給与計算や制度改定を自分が行ったと説明する根拠はありません。

応募先の「労務対応」と照合して残るのは、定型の確認作業が中心か、規程の適用や判断まで求められるかという不明点です。「相談を受けた後、事実確認、制度の適用、本人への回答をそれぞれ誰が担当しますか」と尋ねます。

記入例|Bさんが書ける経験の例

職員の勤務相談を受け、勤務実績の確認と上司への報告を担当しました。既存の申請手順の案内も行いましたが、給与計算、規程の適用判断、制度企画は本部の担当でした。

回答が「受付と事実整理を担当し、本部担当者が確認して回答する」なら、経験が重なる工程と学ぶ手順を整理して選考を進められます。回答が「制度改定や例外判断も一人で担当する」なら、未経験の範囲と確認者を聞き直し、支援を確かめるまでその役割を引き受ける判断は保留します。

人材開発基礎の能力例にも、事務手続や社内の決裁経路を理解し、不明点を上司に確認する行動が示されています。これを経験整理に応用し、調整したこと、案を作ったこと、承認したことを別々の動詞で書いてください。

出典:厚生労働省・人材開発(能力ユニット)

本部へ渡した資料と調整の経験を具体化する

「本部と連携した」だけでは、何を整えたのかが伝わりません。欠員状況をどの項目でまとめ、誰の情報を確認し、差があれば誰へ戻したかまで書くと、資料作成と調整の経験を説明できます。

マイジョブ・カードでは、職務の内容に役割や貢献を添え、得た知識や技能も整理します。本記事の表でも、作った資料名を並べるだけで終えず、自分が確認・提案した内容と、その後に残った課題を記してください。

出典:厚生労働省 マイジョブ・カード 様式2職務経歴シート

研修の計画や教材の見直しを希望するなら、教育担当としての経験整理で、設計・実施・評価の工程を確かめられます。人事部に所属していたという共通点だけで、採用と教育の経験を一括にしないようにしましょう。

経験の根拠を整理するときも、職員の人事情報、応募書類、利用者記録、非公開の社内資料を持ち出して提出しないでください。医療・介護の個人情報ガイダンスでも、氏名などを除いただけで、定められた加工基準を満たさず復元できる情報は匿名加工情報に当たらないと説明されています。

出典:個人情報保護委員会・厚労省 医療介護の個人情報ガイダンス

確認に使える権限がある資料でも、外部へ開示できる範囲は別に確かめます。原本や画面を示す代わりに、自分が扱った項目、確認の手順、承認者との分担を、秘密情報を含まない言葉で説明してください。

未経験の工程を、応募先への質問に変える

表の未経験欄から、入職後すぐに求められる仕事を一つ選び、教わる相手と確認を受ける段階を聞きます。「教えます」という回答だけなら、最初に担当する範囲、確認者が不在のときの相談先まで具体化してください。

希望する工程が絞れたら、人事の担当工程を検索と相談の条件にする方法へ進めます。「本部人事」という肩書だけで探すより、面接運営、勤怠確認、制度運用など、担当したい仕事を言葉にして相談できます。

職務経歴書へ移すときは、施設長の経験を担当範囲ごとに書く方法も参考になります。面接、報告、提案の記述と、採否や制度の決裁者が矛盾していないかを確かめてください。

提出後は、実績と担当範囲を面接で説明する準備に沿って、一つの経験を口頭で確かめます。「あなたが決めたことは何ですか」と聞かれても、書類と同じ工程・対象・役割で答えられる状態に整えましょう。

この記事の執筆範囲

企業で人事部長・経営企画部長を経験しています。介護分野では、人材紹介事業の運営・求職者対応と、介護施設向けの採用代行に携わっています。

現在は中小企業診断士事務所で、HR DDなど人材と経営に関わる支援を行っています。この記事の記入例は、書き方や確認手順を示す仮想例です。

参考資料と確認日

本文の根拠資料は2026年10月4日に確認しました。確認手順や質問例は、読者が自分の条件を整理するための編集上の提案です。

出典:厚生労働省 job tag 人事事務

出典:厚生労働省・事務系職種の職業能力評価基準

出典:厚生労働省・職業能力評価基準導入マニュアル

出典:ニチイ学館・働く社員インタビュー(HR)

出典:厚生労働省 採用選考の具体的な方法

出典:厚生労働省・人材開発(能力ユニット)

出典:厚生労働省 マイジョブ・カード 様式2職務経歴シート

出典:個人情報保護委員会・厚労省 医療介護の個人情報ガイダンス

書き込み用の資料

手元で整理する場合は、管理職候補の経験棚卸し(PDF)を使ってください。必要な記入欄に、ご自身の状況を書き込んでください。

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