退職を伝えて条件改善を提案されたら|当初の退職理由と照らして判断する

まっく部長
中小企業診断士 元職業紹介責任者 元医療介護企業 人事責任者
公開日:

職業紹介責任者としてケアマネジャーなど資格職の職業紹介に携わり、 医療介護企業の人事責任者として採用・人事制度設計・労務管理を担当。 介護管理職の転職・採用・キャリア情報を、 公的資料と採用側・紹介側の実務経験をもとに執筆・編集しています。

退職を伝えた後に昇給や増員を提案されたら、最初に退職を決めた理由へ戻って確認してください。条件が良くなっても、時間外連絡や役割の負担が変わらなければ、同じ理由が残ることがあります。

返答前に整理したい方は、改善提案と退職理由を照合する表へ進めます。提案の内容、決める人、始まる日、続く条件を確かめ、残留を考え直せるかを判断するための完成例です。

目次

新しい提案を読む前に、退職を決めた理由を残す

まず、退職を伝える前に困っていた場面を具体的に書きます。「忙しい」だけで終えず、「休日の一次連絡が自分に集中し、代わる人が決まっていない」と書くと、昇給や増員が何を変えるかを確かめられます。

そのうえで、続けるために必要な条件と、調整できる希望を分けてください。提案を見て優先順位が変わった場合も、当初の理由を消さず、何を受け入れられるようになったのかを自分の言葉で残すと判断を説明できます。

当初の理由が曖昧なら、施設長の退職理由と選択肢の整理で、仕事や勤務のどこを変えたいか確認できます。ケアマネの場合は、ケアマネを続ける条件と働き方の選択肢から、業務・体制・契約条件の違いを整理してください。

改善提案と退職理由を照合する表

次は、休日の緊急連絡が集中したことを理由に退職を伝え、基本給の引上げと当番の見直しを提案された架空のケースAです。本人が必要とするのは、休日の一次連絡を一人で受け続けないことと、代替者が決まることです。

現時点では、上司から給与の引上げ額を示されましたが、人事の承認や当番の開始日はまだ確認できていません。以下の表は、元の理由と新提案を同じ項目で比べ、未回答を残した記入例です。

当初の退職理由提案で変わる事実変わらない・未回答確認先と返答期限
休日の一次連絡が自分に集中上司は次月から当番を分担したいと説明担当者、欠員時の代替、本人が当番から外れる日が未定運営責任者へ当番案と開始日を質問。残留への返答日の前日までに回答を相談
他担当が不在だと判断も自分へ戻る本部担当が相談を受ける案受付だけか、判断・対応も引き受けるか不明本部担当へ対応範囲と不在時の代替を確認
休日に予定を立てられない当番表を作ると説明当番外の日にも連絡する例外と、断続的な応援の扱いが未回答運営責任者へ例外条件と見直し担当を確認
給与は上げたい希望だが、主な退職理由ではない基本給の引上げ額を上司が提示人事の承認、適用日、継続条件は未確認人事へ本人に適用する給与条件と確認資料を依頼
架空の完成例です。「説明を受けた事実」と「実施が確定した条件」を区別しています。期限は本人が希望して相談するもので、自動的に認められる期限ではありません。

この表では、給与の提案を受けたことは分かっても、休日の負担が減るとはまだいえません。上司には「当番の担当者、始まる日、担当が休む場合の代替者を確認してから返答したいです」と、判断に必要な情報を伝えます。

引き留め提案は当初の退職理由と比べる。最初に照合:困った場面と続けるための条件に新しい提案を当てはめる。具体案がそろった:承認・開始日・代替者を確認し残留を再検討、実施後の確認も相談。主な理由が残る:昇給だけで負担が消えたとせず体制変更の相談か退職方針の維持。実施時期が不明:確定済みとして比べず回答する人と次の返答日を決める

担当・承認・開始日・例外まで聞く

「改善する予定です」という回答は、誰が何を決めたのかに分けて読みましょう。条件を決める権限を持つ人と、勤務表や現場の分担を実施する人が違う場合は、それぞれの回答を対応させます。

労働契約法は、提示条件への理解を深め、契約内容をできる限り書面で確認することを定めています。合意による条件変更の原則を踏まえ、口頭の提案も日付と発言者を残し、本人に適用する決定内容を確かめてください。

出典:厚生労働省・労働契約法のあらまし

確かめることケースAの質問例回答の根拠として残すもの
承認と実施の担当当番変更は誰が承認し、誰が勤務表へ反映しますか承認者・担当部署からの回答、当番案の適用月
開始と継続いつから始め、いつ負担の変化を確認しますか開始日と確認日、見直しを決める人
例外担当者の休みや欠員のとき、誰が判断と対応を代わりますか例外時の分担と連絡先。本人へ戻る条件
給与との関係提示額は基本給の変更ですか、期間や担当に条件のある手当ですか本人向けの内訳、適用期間、終了・見直し条件
当初の理由に関係する事項を具体化する独自の質問表です。全項目を法定書面の必須欄とするものではありません。

給与の説明は、基本給、諸手当、賞与などを分けて照合します。モデル労働条件通知書の項目も参考になりますが、昇給の提案が一時的な手当だった場合は、同じ改善内容として扱わないようにしてください。

出典:厚生労働省・令和8年改正対応モデル労働条件通知書

ケースAへの回答例元の理由に対する変化本人の次の判断
当番分担を承認済み。開始日・代替者・例外時の判断者も回答休日の一次連絡と判断の集中を変える具体案がそろった本人の必要条件と照合し、残留を再検討。実施後の確認日も合意内容と区別して相談
給与は上げるが、連絡体制は今のまま給与の希望は変わるが、主な退職理由は残る給与増を理由解消とせず、体制変更の余地を再確認するか退職方針を維持
増員できたら当番を変える。配置時期は未定実施条件も開始日も未確定回答可能な内容と次の返答日を相談。実施済み・確定済みとして比較しない
回答を得た場合の架空の分岐です。当初の退職理由と改善案を照らして判断します。

改善案が「施設長を外れて一般職になる」なら、役職を外した後の給与・夜勤・責任の比較で担当範囲を確認できます。名前だけ変わって代行が続く場合もあるため、当初の退職理由に関わる業務が実際に外れるかを見てください。

増員の提案と、内定先へ伝えた約束を分ける

次は、欠員を埋める勤務が続いたため退職を伝え、増員を提案された架空のケースBです。本人は別法人の内定を承諾する旨と入職予定日をすでに伝えており、現職の提案だけでは返答を決められない状態です。

現職の上司からは「採用を進める」と説明されましたが、予算の承認と配置日は不明です。本人は、増員後の希望だけでなく、配置までの応援体制と既に交わした連絡を別々に整理します。

整理する対象手元にある情報未確認と次の質問
現職の増員提案上司の説明メモと提案日。「採用を進める」募集開始・予算承認・採用決定・配置開始のどこまで決まったかを人事へ確認
配置までの勤務欠員時の自分の応援が続く予定配置が遅れた場合の応援担当と、本人に求める範囲を運営責任者へ確認
現職への返答残留を考えてほしいと言われた条件回答の見込みと、残留への返答を求める日時を別々に確認
内定先との経緯本人が送った承諾の連絡、入職予定日、先方の返信契約書面とやり取りを整理。変更を考えるなら採用窓口へ扱いを相談し、必要に応じ専門家等へ確認
ケースBの架空の記入例です。募集開始と採用・配置の確定を分け、承諾の法的な成立や取消し可否をこの表で判定しません。

現職には、「採用が決まるまでの勤務を含めて検討したいので、承認済みの範囲と配置予定日、遅れた場合の対応を教えてください」と尋ねます。採用予定者の氏名や応募書類を求めず、本人の勤務条件に関わる説明を確認してください。

回答が「募集する方針だけで配置は未定」なら、現在の負担が続く可能性を残して判断します。「配置とそれまでの応援が確定した」という回答なら、その日付・担当・遅延時の扱いが自分の必要条件を満たすか再検討できます。

どちらの回答でも、現職の条件が改善しただけで内定先への承諾や入職予定日が自動的に変わるわけではありません。既にした合意の扱いに疑問がある場合は、連絡履歴と書面を用意して相談し、自由に撤回できる前提で返事を進めないでください。

他法人から複数の内定を受けている場合は、複数内定の必須条件と未確認事項の比較を使えます。ケアマネとしての内定条件は、ケアマネの内定後に担当・勤務条件を照合する方法で確認し、現職の改善案とは相手と根拠を分けて残してください。

返答には、変わった理由と残る理由を一つずつ残す

返答を決める前に、「当初の理由のうち何が変わり、何が残ったか」を短く書いてみましょう。残留を再検討する場合も、退職方針を続ける場合も、昇給額や相手への遠慮だけで理由を置き換えずに済みます。

まだ判断できない場合は、未回答の項目、回答する人、回答の見込みと返答期限を整理します。期限の変更を相談しても、相手が認めたことを確認するまでは、変更済みとは扱わないでください。

労働条件や退職を巡って話し合いが難しい場合は、総合労働相談コーナーなどの公的窓口を利用できます。会社の回答待ちを相談の前提にせず、今ある資料と経緯をもとに、相談機関の公式案内から窓口を確認してください。

出典:厚生労働省・労働条件相談機関

口頭で改善を約束されました。書面がなければ無効ですか。

口頭だから一律に無効とはいえません。提案した人・日付・内容を残し、承認の状況と本人に適用する条件をできる限り書面等で確認してください。

引き留めを受けたら、退職理由をもう一度全部説明すべきですか。

新提案で変わるか判断するために必要な理由を選んで伝えます。私生活や第三者の情報を広げるより、勤務や役割のどの条件が変われば続けられるかを具体化してください。

この記事の執筆範囲

企業で人事部長・経営企画部長を経験しています。介護分野では、人材紹介事業の運営・求職者対応と、介護施設向けの採用代行に携わっています。

現在は中小企業診断士事務所で、HR DDなど人材と経営に関わる支援を行っています。この記事の記入例は、書き方や確認手順を示す仮想例です。

参考資料と確認日

本文の根拠資料は2026年10月4日に確認しました。確認手順や質問例は、読者が自分の条件を整理するための編集上の提案です。

出典:厚生労働省・労働契約法のあらまし

出典:厚生労働省・令和8年改正対応モデル労働条件通知書

出典:厚生労働省・労働条件相談機関

書き込み用の資料

手元で整理する場合は、転職判断整理シート(PDF)を使ってください。必要な記入欄に、ご自身の状況を書き込んでください。

目次