施設長から一般職へ戻りたいときは、減らしたい仕事と変更後の給与を一緒に確かめてください。役職名が変わっても、欠員時の代行や退勤後の相談が残るなら、希望していた働き方になるかはまだ分かりません。
具体案がある方は、役職を外した後の条件を比べる表へ進めます。法人内で一般職になる案と、別法人へ転職する案を、同じ月額・勤務・担当範囲で照合する完成例です。
最初に、引き続き担う仕事と減らしたい仕事を分ける
「管理職を降りたい」を、採用の判断から外れたい、休日の連絡を受けない働き方にしたい、といった具体的な希望にしてみましょう。後輩への助言は続けたい場合も、助言することと最終判断を任されることを分けて書くと、変更案と比べられます。
条件を変える際は、現在の契約内容と法人の提案を確認します。労働契約法は合意による変更を原則とし、就業規則の変更については別の規定を置いているため、希望を伝えれば必ず降職や従来給与の維持が認められるとはいえません。
まだ一般職になる案まで絞れていないなら、施設長を辞めたい理由と選択肢の整理で、現職改善や異動を含めて考えられます。この記事では、役職を外す具体案が出た後の比較を進めます。
給与は役職手当の終了と夜勤による増減を分ける
変更前後の給与は、本人に適用される基本給と固定の手当、回数などで変わる手当に分けましょう。厚生労働省のモデル労働条件通知書にも、基本賃金、諸手当、割増賃金、賞与などを分けた欄があります。
固定残業代を含む提示なら、その額と対象時間等、超過時の扱いも別に確認してください。夜勤手当については、1回の額、支給対象となる勤務、深夜割増との関係を聞き、夜勤手当だけでその月の賃金全体を計算しないようにします。
固定分と条件付きの金額を分類しにくい場合は、施設長の給与の内訳をそろえる方法で支給条件を確認できます。役職手当がなくなる一方で夜勤手当が増える案は、金額だけでなく勤務回数も同じ表へ残しましょう。

役職を外した後の条件を比べる表
ここからは架空のケースAです。本人は月額固定分27万円以上と、施設全体の最終判断・休日の連絡当番から外れることを必要な条件にし、法人内の変更案と別法人の一般職案を比べています。
変更前の月額固定分は、基本給等27万円と役職手当5万円の計32万円という設定です。以下の金額は税・社会保険料などの控除前で、固定残業代、賞与、残業代、通勤費などは含めない比較用の額です。
| 比較項目 | 現職の役割変更案 | 別法人の一般職案 | 未確認と必要な条件 |
|---|---|---|---|
| 月額固定分 | 基本給等27万円。役職手当5万円は変更日から終了する提案 | 本人への提示は基本給等27万円。役職手当なし | 両案とも通常月の固定分は27万円。適用開始日・欠勤等の扱いを確認 |
| 夜勤と変動手当 | 通常の夜勤なし。欠員時の応援は未確認 | 夜勤1回8,000円、月4回を想定。回数の保証は未確認 | 想定回数を固定額に含めない。試用期間と回数が減る月を聞く |
| 判断責任 | 日々の介護業務を担当。施設長不在時は代行を期待 | 一般職として現場判断を行い、施設全体の判断は施設長へ相談と説明 | 現職の代行に採用・事故対応等の最終判断まで含むか不明 |
| 相談と緊急連絡 | 後任の相談相手になる予定。休日連絡の扱いは未回答 | 勤務時間内の相談はリーダーへ。休日の連絡当番なしと個別回答 | 現職でも勤務外の窓口から外れることが必要 |
| 代行の期間と支援 | 欠員が出たら協力してほしいとの説明のみ | 施設長代行は依頼しないと説明 | 現職の頻度、期間、決める人、代行中の担当調整・手当を確認 |
| 再登用と変更日 | 将来の再登用も期待。開始日は相談中 | 一般職として入職。役割変更時は改めて相談する説明 | 現職で再登用を前提にするのか、今回外れる業務と開始日を確認 |
まず手元の条件書面と給与明細から変更前の内訳を拾い、各案の本人向け提案と回答日を対応させます。二つの案が「一般職」でも、現職だけ代行の説明が残るため、給与が同じことだけで同条件とは扱えません。
現職には「施設長不在時に私が決める事項と、上位者へ戻す事項を教えてください。代行を始める人・終える人、期間、休日連絡、手当も確認したいです」と尋ねます。
| ケースAへの回答例 | 分かったこと | 次の判断 |
|---|---|---|
| 本部担当が施設長代行を引き受け、本人は勤務時間内の助言だけを担う | 外れたい最終判断と休日当番を本人が担わない案になった | 業務分担と開始日を書面等で照合し、固定分27万円の条件と合わせて法人内変更を検討 |
| 後任が休むときは本人が施設全体を判断し、休日も連絡を受ける | 本人が減らしたい責任が残る | 代行の範囲を変えられるか再確認。変更できなければ別法人案も検討 |
| 実際に始めてから決める | 役割変更後の分担・例外が未確定 | 不明点と回答担当、回答予定日を残す。一般職になるだけで問題が解消したとは判断しない |
夜勤込み30万2,000円は、固定27万円と分けて読む
次は架空のケースBで、別法人の一般職について「月30万2,000円ほど」と説明された人を考えます。本人は、夜勤回数にかかわらず月額固定分29万円以上が必要だと決めています。
本人向けの資料を読むと、固定分は27万円で、1回8,000円の夜勤を月4回行った場合の説明でした。試用期間の夜勤開始時期と、毎月4回担当できるかはまだ確認できていません。
| 比較する仮定月 | 固定分+夜勤手当の計算 | 読み取れる範囲 |
|---|---|---|
| 夜勤4回を実施した月 | 270,000円+8,000円×4回=302,000円 | この仮定月の固定分と夜勤手当の小計。固定額は270,000円 |
| 同じ条件で夜勤0回の月 | 270,000円+8,000円×0回=270,000円 | 夜勤がない月の同じ範囲の小計。必要な固定分290,000円には届かない |
採用担当には、「30万2,000円のうち毎月固定の部分はいくらですか。試用期間や夜勤0回の月に適用する条件と、夜勤手当の支給対象を教えてください」と確認します。
回答が「固定分は27万円で、4回は想定にすぎない」なら、ケースBの必要条件とは一致しません。固定条件の変更が可能かを聞き、難しければ別の候補を探すか、本人の生活条件を見直せるか検討します。
「毎月4回の夜勤を予定している」という回答でも、固定分29万円以上が確認できたことにはなりません。固定部分を変更する提案が出た場合は、その内訳と適用開始日を改めて確認してから比較し直してください。
夜勤を引き受けられるかは、施設長の夜勤・現場兼務・緊急連絡の確認項目で、通常時と欠員時を分けて考えられます。夜勤の回数が収入を補う案でも、減らしたかった勤務外の負担が増えるなら、給与とは別に希望と照合しましょう。
役割と給与の変更日をそろえて最終確認する
法人内変更なら、役職手当が終わる日と、後任や代行者へ仕事を渡す日を並べて確認してください。給与は一般職相当になる一方で、引き継ぎ後も施設長の判断を続ける説明なら、期間と扱いを再確認する必要があります。
転職の場合は、本人の勤務地・業務とその変更範囲も確認します。2024年4月以降は、全ての労働契約の締結時と有期契約の更新時に、就業場所・業務の変更範囲の明示が加わっています。
聞き取った分担や手当は、回答者、日付、本人に適用する期間と一緒に残しましょう。労働契約法にも、契約内容についてできる限り書面で確認する規定がありますが、書面がないことだけで変更を一律に無効と判断するものではありません。
退職を伝えた後に役割変更を提案された場合は、引き留めの改善提案と退職理由の照合で、元の悩みがどこまで変わるかを見直せます。役職を外す案の内容が決まっても、給与以外に残る退職理由は別に確認してください。
役職名、月額固定分、夜勤、相談・代行の範囲をそろえると、変更案で希望する働き方になるか判断できます。必要な条件が未回答なら、何の回答が必要かと、いつまでに返事をもらいたいかを伝えましょう。
この記事の執筆範囲
企業で人事部長・経営企画部長を経験しています。介護分野では、人材紹介事業の運営・求職者対応と、介護施設向けの採用代行に携わっています。
現在は中小企業診断士事務所で、HR DDなど人材と経営に関わる支援を行っています。この記事の記入例は、書き方や確認手順を示す仮想例です。
参考資料と確認日
本文の根拠資料は2026年10月4日に確認しました。確認手順や質問例は、読者が自分の条件を整理するための編集上の提案です。
書き込み用の資料
手元で整理する場合は、転職判断整理シート(PDF)、年収条件の分解比較表(PDF)を使ってください。必要な記入欄に、ご自身の状況を書き込んでください。
