ケアマネの職場を比べるとき、担当件数が少ない方が働きやすいとは限りません。同じ件数でも、新規の担当、移動、記録、事務支援、管理者との兼務によって、勤務時間の使い方が変わるためです。
確認表から読む場合は、担当件数と支援体制の比較例をご覧ください。本文の前提と注意点も合わせて確認できます。
まず、その数字が事業所の人員配置に使う数なのか、報酬の算定に使う数なのか、自分が受け持つ人数なのかを分けてください。この記事では居宅ケアマネを対象に、数字の定義をそろえて応募先へ聞く方法を整理します。
「何件ですか」の前に、何を数えているか聞く
「担当は35件程度」と聞いたら、何月の、誰の、どの利用者を数えた数字かを確認します。事業所全体の平均と、入職直後に任される担当数を同じ数字として扱わないことが出発点です。
| 数字の用途 | 数えているもの | 転職で追加確認すること |
|---|---|---|
| 人員配置の基準 | 事業所に置く介護支援専門員の員数を考えるための利用者数 | 基準の適用条件と、実際に働く職員・支援体制 |
| 報酬上の取扱件数 | 所定の利用者数を事業所の介護支援専門員の常勤換算員数で除した数 | どの算定区分か。個人の担当実人数とは違うか |
| 本人の担当数 | 本人が受け持つ利用者や案件の数。職場の集計方法を確認する | 対象月、要介護・予防等の内訳、新規や終了の数 |
| 入職後の予定数 | 引き継ぐ担当と、今後増やす予定 | 開始時点、増やす時期、増員判断、相談できる相手 |
職場が独自に使う件数の呼び方も、制度上の取扱件数と一致するとは限りません。「予防を含む実人数ですか」「事業所全体を職員数で割った数字ですか」と聞き、回答の前提をそろえます。
人員基準の44・49と、報酬区分の45・50を分ける
人員基準は、事業所に置く介護支援専門員の員数を考えるために使います。報酬区分は、事業所が介護報酬を算定するときに使う別の基準です。
| 用途 | 本文で扱う数字 | 適用条件の要点 |
|---|---|---|
| 人員基準 | 利用者数44またはその端数を増すごとに員数1 | 対象となる利用者の数に、所定の予防支援の換算を含める |
| 条件を満たす場合の人員基準 | 利用者数49またはその端数を増すごとに員数1 | 所定のケアプランデータ連携システムを利用し、事務職員を配置 |
| 報酬算定の区分 | 居宅介護支援費Ⅰは45未満の部分、Ⅱは50未満の部分など | Ⅱにはシステムの利用、事務職員の配置、届出等の条件がある |
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」、厚生労働省「指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準」
人員基準で利用者数を数えるときは、指定介護予防支援を併せて行う所定の場合、その人数に3分の1を乗じ、居宅介護支援の利用者数に加えます。札幌市の現行条例でも同じ数え方を確認できますが、応募先の条例や指定権者の取扱いは別に確かめてください。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」、札幌市「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営の基準等に関する条例」
44・49は事業所の人員基準、45・50等は報酬区分を読むための数字です。個人が必ずその人数を担当するという命令でも、その範囲なら無理なく働けるという保証でもありません。
この違いを説明する目的は、応募者が事業所の報酬請求を自分で点検することではありません。採用担当者の説明がどの数字を指しているかを確かめ、自分の予定業務と支援体制へ質問を進めるために使います。
予防を含む実人数と、制度上の換算値を混ぜない
報酬上の取扱件数は、所定の居宅介護支援と指定介護予防支援の利用者数を使い、事業所の介護支援専門員の常勤換算員数で除して求めます。月当たりの算定に用いる人数と、職場が手元の担当一覧で数えた月末人数では、集計の対象や時点も異なることがあります。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準」
数え方だけを確認する仮想例として、ある月の居宅介護支援の利用者30人、算定に含める指定介護予防支援の利用者12人、介護支援専門員の常勤換算員数1.0人を想定します。利用者の重複や算定上の除外はなく、ほかの利用者は数に含まれないという前提です。
| 確認する数 | 仮想例の計算 | 意味 |
|---|---|---|
| 換算前の利用者の実人数 | 30+12=42人 | この仮定で、二つの区分に属する利用者を重複なく足した人数 |
| 予防支援を換算した分 | 12×1/3=4 | 制度が定める算入方法による数。仕事が4人分になるという意味ではない |
| 報酬上の取扱件数 | (30+4)÷1.0=34 | この仮定で、事業所の常勤換算員数を用いた値 |
この例では、取扱件数が34でも、換算前には42人の利用者がいます。3分の1という算入方法を、連絡、訪問、相談や記録の時間が必ず3分の1になるという意味に読み替えることはできません。
応募先では、指定介護予防支援、地域包括からの委託、その他の業務をどのように区分しているかも聞きます。「予防」とまとめた数字だけでは計算を再現できない場合があるため、名称と内訳が分かるまで同じ条件の件数として比べないでください。

同じ月の担当を、増減・移動・事務・兼務に分ける
本人の担当数を比べるときは、まず同じ対象月と数え方にそろえます。そのうえで、担当の増減、訪問範囲、記録や請求の分担、管理・指導の仕事がどれだけ重なるかを確認してください。
| 確認する項目 | 件数だけでは分からない点 | 質問例 |
|---|---|---|
| 新規・終了・引き継ぎ | 月末の数が同じでも、その月に動いた担当の数は違う | 同じ月に、新規受入れや担当変更はどの程度ありましたか |
| 調整の状況 | 入退院、方針変更、関係者との連絡などの重なり | 担当者だけで進めにくい調整を、誰に相談できますか |
| 移動と訪問範囲 | 訪問先の広がり、移動手段、予定の組み方 | 通常の担当範囲と、移動を含めた予定の組み方を教えてください |
| 記録・給付管理 | 入力、確認、修正、請求のうち本人が担う工程 | 事務職員との分担と、その人が休みの日の対応はどうなりますか |
| 管理・指導・兼務 | 会議、後輩支援、管理者業務、他職種への応援 | 担当件数に加えて任される業務と、時間配分を決める人は誰ですか |
事務職員がいるという説明も、支援の内容まで確かめる必要があります。国の解釈通知には、事務職員は常勤でなくてもよく、同一法人内の配置も認められるとあるため、自分の勤務時間中に何を引き受けてもらえるかは別の質問になります。
出典:厚生労働省「老企第22号の令和6年改正新旧対照表」別紙12
管理者や主任ケアマネとして応募する場合は、自分の担当に加えて行う相談・指導・管理の仕事を聞きます。予定件数を減らす説明があっても、何に時間を使う想定なのか、欠員時に担当が戻ってくるのかを確認してください。
個別の利用者情報や、詳しい病歴・家族構成を聞き出す必要はありません。業務の種類、連携する相手、相談の手順、個人を特定しない範囲の仕事量から、入職後に必要な支援を確認します。勤務先による役割の違いは、居宅・施設・地域包括の仕事内容で確かめると、件数以外に比べる条件を整理できます。
主任として担当・指導・管理が重なる負担を整理したい場合は、主任ケアマネの業務と分担の見直しへ進めます。件数の比較で見つかった兼務や支援の不足を、誰と何を調整するかという相談事項へ移してください。
事務支援を比較条件にする場合は、事務作業の担当と受渡しの確認で、依頼から返却までの工程を整理できます。任せられる作業と本人に残る準備・確認を並べ、支援を使える曜日や締切を尋ねてください。
35件と40件の仮想例から、追加質問を作る
次は、比較時点を同じ月末にそろえ、本人の担当実人数が35人の職場と40人の職場を比べた、別の仮想例です。先ほどの制度上の換算値ではなく、要介護・予防等を含めて本人が受け持つ人数であり、実在の求人を示すものではありません。
| 比較する項目 | 仮想の職場A | 仮想の職場B | 追加で確かめること |
|---|---|---|---|
| 月末の担当実人数 | 35人 | 40人 | 本人の開始予定数か、在籍者の実績か |
| 新規・引き継ぎ | 今後、新規を多く受ける予定との説明 | 既存担当の引き継ぎが中心との説明 | 対象月の増減と、増やす判断をする人 |
| 管理業務 | 管理者業務も任せる予定 | 管理者は別に配置 | Aの管理業務の範囲、Bで本人に残る分担 |
| 事務支援 | 法人内に担当者あり。支援時間は未確認 | 入力を支援する担当者あり。不在時は未確認 | 工程ごとの担当と、不在時の代替 |
| 移動・相談 | 担当地域と相談の機会は未確認 | 担当地域と相談の機会は未確認 | 勤務予定へ収まるか、判断に迷ったときの支援 |
この表から分かるのは、Bの40人を件数だけで候補から外せないということです。Aも担当が少ないだけで負担が軽いとは決まらず、増える担当と管理業務、使える支援を確かめる必要があります。
たとえば、「管理者との兼務は避けたい」を外せない条件とするなら、Aには担当職務を変更できるかを先に聞きます。Bは事務支援と移動・相談体制を確認する候補に残し、回答がそろうまで働きやすさの順位を付けません。
Aで兼務が必須と分かれば、その条件では候補から外す判断ができます。Bでも必要な相談支援が得られないと分かった場合は、40人という数字の良否を議論するより、別の職場も比較対象に加えてください。
仮想例で未確認とした移動の条件は、訪問移動と車両費用の確認を使って質問にできます。訪問先の広がりと移動予定、使う車、本人が負担する費用をそろえてから、担当件数と合わせて比べてください。
入職時の担当条件と、増やすときの手順を残す
入職時点の担当数と、一定期間後の予定数は別に聞きます。増える前に誰が習得状況や業務量を確認し、調整が必要なときにどこへ相談するかまで分かると、入職後の説明と照合できます。
制度上の数、事業所平均、本人の実人数、入職後の予定を分けます。対象月と予防等の内訳が分からない数字は、まだ比較できない情報として残してください。
新規・移動・記録・事務支援・管理兼務について、通常時と不在時の分担を聞きます。自分が外せない条件から確認し、必要な支援があるかを比べます。
回答した人、確認日、説明資料、未回答の質問を残し、採用時の業務や勤務条件の説明と照らし合わせます。担当を増やす条件が不明なら、確認相手と回答時期を決めてから受諾を考えてください。
細かな件数や支援体制を、労働条件通知書だけですべて確認できるとは限りません。担当業務の説明や職務分担の資料も使い、数字が変わった場合に何を相談するかを双方で確認します。
よくある質問
- 44件や49件までは、担当を増やしても問題ありませんか。
-
その数字だけでは個人の業務負担を判断できません。人員基準の用途と適用条件を確認したうえで、新規受入れ、移動、記録、兼務と支援を含めて相談してください。
- 予防は一人を3分の1件として、転職先の負担も比べればよいですか。
-
制度上の算入方法と、実際に担う仕事の量は別です。本人の担当実人数と業務内訳も確認し、予防の対応時間が必ず3分の1になると考えないでください。
- 求人の件数が自分の今の担当より多ければ、応募を見送るべきですか。
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同じ対象月と数え方になっているかを先に確認してください。そのうえで事務支援、移動、管理兼務などを比較し、自分が必要とする条件が満たせるかで判断します。
担当件数は、職場を選ぶための入口になる情報です。数え方と、同時に任される仕事をそろえたうえで、足りない回答を集め、入職後に担える条件かを考えてください。質問の準備にはケアマネ面接の逆質問、内定後の照合には担当開始と勤務条件の確認を使い、入職時の担当を具体化してください。
この記事の執筆範囲
企業で人事部長・経営企画部長を経験しています。介護分野では、人材紹介事業の運営・求職者対応と、介護施設向けの採用代行に携わっています。
現在は中小企業診断士事務所で、HR DDなど人材と経営に関わる支援を行っています。この記事の記入例は、書き方や確認手順を示す仮想例です。
参考資料と確認日
本文の根拠資料は2026年10月4日に確認しました。確認手順や質問例は、読者が自分の条件を整理するための編集上の提案です。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準」
出典:厚生労働省「老企第22号の令和6年改正新旧対照表」別紙12
出典:札幌市「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営の基準等に関する条例」
書き込み用の資料
手元で整理する場合は、ケアマネ勤務先比較表(PDF)を使ってください。必要な記入欄に、ご自身の状況を書き込んでください。
