居宅管理者の複数事業所兼務を引き受ける前に|勤務・移動・緊急対応を確認する

まっく部長
中小企業診断士 元職業紹介責任者 元医療介護企業 人事責任者
公開日:

職業紹介責任者としてケアマネジャーなど資格職の職業紹介に携わり、 医療介護企業の人事責任者として採用・人事制度設計・労務管理を担当。 介護管理職の転職・採用・キャリア情報を、 公的資料と採用側・紹介側の実務経験をもとに執筆・編集しています。

複数の居宅介護支援事業所の管理者を頼まれたら、各事業所で担う職務と勤務予定を並べて確認しましょう。通常日の予定に加え、同時に問題が起きたときに管理者自身がどう対応するかまで説明を求める必要があります。

条件を整理したい方は、複数事業所の勤務と対応を確認する表へ進んでください。同じ法人内の兼務でも各事業所の役割、移動、不在時の連絡を別々に整理できます。

目次

管理者の配置条件と、自分に提示された兼務案を分ける

国の基準では、指定居宅介護支援事業所ごとに常勤の管理者を置き、原則として管理者の職務に専従することとされています。自事業所のケアマネ業務を担う場合のほか、管理に支障がない場合の他事業所の職務との兼務が規定されています。

出典:厚生労働省・指定居宅介護支援等の人員運営基準

この規定から「同じ法人なら二拠点を兼務できる」と一括して判断することはできません。各事業所の指定、職務、勤務体制を示したうえで法人が指定権者へ何を確認したかを聞きましょう。

管理者には原則として主任介護支援専門員が必要ですが、主任の資格を持つことと管理者へ任命されることは別です。例外や経過措置の適用も個別の条件によるため、新たな兼務案へ当然に使えるとは考えないでください。

出典:厚生労働省・指定居宅介護支援等の人員運営基準

主任としての指導と管理者の仕事がまだ曖昧なら、主任の役割と管理者の受諾条件を先に整理してください。兼務先が増える前に、自分が引き受ける役割の範囲をそろえると質問しやすくなります。

各事業所の担当、指導、管理を並べる

管理者は従業者の管理や利用申込みの調整、業務状況の把握等を一元的に行い、必要な指揮命令を担います。自分の担当ケースと他のケアマネへの指導、事業所の管理を分けると、どの時間帯に何が重なるかを確かめられます。

出典:厚生労働省・指定居宅介護支援等の人員運営基準

区分各事業所で確かめる仕事重なるときの質問
自分の担当ケース訪問、計画作成、会議、記録管理業務が重なる日も同じ担当量を前提としているか
他のケアマネへの指導相談、同行、確認が必要な内容自分が別の事業所にいる間は誰へ相談できるか
事業所の管理従業者の管理、申込みの調整、業務状況の把握等判断が必要な連絡を誰が受け、管理者へどう伝えるか
法人の支援人員調整、事務支援、本部への相談支援担当者ができることと、管理者自身に残ることは何か
管理者の法定責務を他者へ丸ごと移すための表ではなく、仕事の重なりを確認する整理例

担当と指導と管理が重なって苦しくなりそうな場合は、主任ケアマネの負担を整理する記事も参考になります。二拠点の配分だけを変える前に、自分に残る仕事と法人へ求める支援を分けておきましょう。

居宅の複数管理は同時対応までたどる。1 事業所ごとに:指定サービスと担当・指導・管理の職務を並べる。2 勤務案を作る:訪問・会議・記録に拠点間の移動を加える。3 同時に問題が起きたら:本人の判断・駆け付けと他方への連絡・法人支援を聞く。4 個別案を照合:法人が指定権者へ確認した内容と勤務案を照らす。近い・同じ法人という説明だけで決めない。

架空例Aで、勤務と移動と緊急対応を確認する

以下は実在の法人や著者の経験ではない架空例です。応募者Aは「午前は居宅A、午後は居宅Bを管理すればよい」と提案され、会議のある日は居宅Aへ戻る予定も説明されました。

事業所と兼務する職務通常の勤務と移動不在時連絡・緊急時対応法人・指定権者の確認と未回答
居宅Aの管理者とケアマネ午前は居宅A。本人の訪問と計画業務も残る案午後の連絡受付は職員が担当する案自分の担当業務と管理の配分、配置上の確認結果は未回答
居宅Bの管理者午後は居宅B。相談と業務状況の確認を行う案午前は職員が受付し管理者へ連絡する案午前に現場判断が必要な場合の具体的対応は未回答
会議のため居宅Aへ戻る日A→Bを25分、B→Aを25分と見込む移動中の連絡方法と判断の引継ぎは未確認移動を含む勤務表と会議時間の調整を求める
両事業所で同時に問題が起きた場合通常の訪問や会議の変更も必要になり得る連絡の優先順位、法人支援、本人の駆け付けは未確認各事業所の管理に支障がない体制を説明してもらう
架空例A。記載した勤務案や支援の存在だけで、個別の配置が基準に適合すると判定するものではありません

この会議日は片道25分の移動が2回なので、計画上の移動は25分×2回=50分です。通勤や利用者宅への訪問、会議や記録は含めておらず、50分なら管理に支障がないという基準ではありません。

国の解釈通知は、事故や災害等の緊急時に管理者自身が速やかに事業所又は利用者の居宅へ駆け付けられない体制を、支障がある例として挙げています。平塚市の令和8年度手引きでも同趣旨が示されていますが、移動時間の全国共通の上限を示すものではありません。

出典:厚生労働省・老企第22号令和6年改正新旧対照表別紙12、平塚市・令和8年度居宅介護支援運営の手引き

Aさんは「会議と訪問がある日に、二つの事業所から同時に判断を求められた場合の流れを説明してください」と法人へ質問できます。受付をする人がいることに加え、必要な判断と現場への対応、管理者自身の移動を誰がどう調整するかを確かめましょう。

法人から担当業務の縮小や勤務表の見直し、緊急時の対応手順と指定権者への確認内容が示されれば、その具体案を基に受諾条件を検討できます。「近いので大丈夫」という回答だけであれば、移動時間で可否を決めず、未回答の体制を具体化するまで兼務案の検討を保留しましょう。

在宅勤務でも、管理者自身に残る仕事を確認する

管理者がテレワークを行う場合も、自ら責務を果たせる体制と勤務中の連絡体制が必要です。厚生労働省の通知は、緊急時の対応の流れをあらかじめ決め、必要に応じて管理者自身が速やかに出勤できるようにすることを示しています。

出典:厚生労働省・介護事業所等のテレワーク留意事項

各事業所に連絡担当者を置くことは、管理者の判断や責務をすべてその担当者へ移すこととは違います。現場の状況をどう把握し、どの場面で本人が出勤し、その間もう一方をどう管理するかまで確認してください。

架空例Bで、在宅なら両方を管理できる説明を見直す

架空の応募者Bは「自宅から両方の事業所へ連絡できるので、移動は要らない」と説明されました。通常の連絡は可能でも、現場での対応が必要な場合と、機器が使えなくなった場合の手順は聞いていません。

Bさんは両事業所の会議や業務報告の方法を集め、「自分の出勤が必要になる条件と、その間の連絡・支援を教えてください」と尋ねます。在宅の日数を先に決めるのではなく、各事業所の管理を続けられる具体的な勤務案を求めましょう。

現場把握と本人の出勤、他方への連絡や法人支援まで具体的に説明されれば、その案と自分の働ける条件を比べられます。現地職員への任せ方しか説明されない場合は、管理者自身が担う範囲を再確認し、兼務先や勤務配分の見直しを求めてください。

在宅勤務を含む案は、在宅で担う業務と出勤の条件も確認しましょう。通常の連絡が取れることだけで、訪問や必要な出勤を省略できるとは判断できません。

受諾前は、法人の回答と未回答を同じ条件表に残す

勤務先ごとの職務と勤務配分、支援内容とその開始時期を、提示された条件書面と照合してください。モデル労働条件通知書の就業場所・業務の変更範囲も確認し、今の二拠点に限る説明なのか、今後の変更も想定されるのかを聞きましょう。

出典:厚生労働省・令和8年改正対応モデル労働条件通知書

STEP
各事業所の職務と勤務案を集める

正式な事業所名と指定サービス、本人の担当業務、管理者としての職務を並べます。通常の移動と、同時に対応を求められる場面を勤務案に入れてください。

STEP
法人の説明と指定権者への確認を照合する

法人が示した職務や勤務案と、指定権者へ確認した内容が同じかを確かめます。確認日や資料、回答の対象範囲を残し、一般的な兼務の説明だけで個別案が確認済みとは扱わないようにしましょう。

STEP
残る不明点で受諾の判断を変える

条件と対応が具体化して希望に合えば、任命と雇用条件の確認を進められます。未回答が残る場合は、確認する担当者と回答時期を決め、職務・勤務・支援のどれを見直すか相談してください。

休暇や急病で本人が不在になる場合は、代替対応の範囲も確かめてください。内定時の担当と勤務条件を照合すると、兼務の説明と入職後に求められる仕事の違いを残せます。

現在の居宅管理者を退く相談が必要になった場合は、後任配置と本人の退職を分けて確かめる手順を使えます。兼務案の見直しとは区別して、法人が確認する要件と本人が相談する日程を整理してください。

同じ法人の近い事業所なら、兼務を引き受けても大丈夫ですか

法人や距離だけでは判断できません。事業所ごとの職務と勤務体制、緊急時の対応を示し、法人による指定権者への確認内容と合わせて検討してください。

支援者がいれば、管理者は現場へ行かなくてもよいですか

支援者が担う対応と、管理者自身が果たす責務を分けて確認する必要があります。在宅勤務を含む案でも、現場把握と必要時の本人の出勤まで説明を求めましょう。

この記事の執筆範囲

企業で人事部長・経営企画部長を経験しています。介護分野では、人材紹介事業の運営・求職者対応と、介護施設向けの採用代行に携わっています。

現在は中小企業診断士事務所で、HR DDなど人材と経営に関わる支援を行っています。この記事の記入例は、書き方や確認手順を示す仮想例です。

参考資料と確認日

本文の根拠資料は2026年10月4日に確認しました。確認手順や質問例は、読者が自分の条件を整理するための編集上の提案です。

出典:厚生労働省・指定居宅介護支援等の人員運営基準

出典:厚生労働省・老企第22号令和6年改正新旧対照表別紙12

出典:平塚市・令和8年度居宅介護支援運営の手引き

出典:厚生労働省・介護事業所等のテレワーク留意事項

出典:厚生労働省・令和8年改正対応モデル労働条件通知書

書き込み用の資料

手元で整理する場合は、主任ケアマネの管理者受諾確認表(PDF)を使ってください。必要な記入欄に、ご自身の状況を書き込んでください。

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