有期契約を提示されたら、今回働く期間と、更新後に働ける見通しを分けて確かめてください。「更新する場合がある」という説明だけでは、希望する期間まで働けるかは分かりません。
日付と未確認事項を整理する方は、契約と更新の時点を確認する表へ進めます。開始・満了・更新判断・上限と、無期転換の申込み・開始日を分けた架空の記入例です。
契約の長さ、更新の判断、上限はそれぞれ読む
労働条件通知書などで、契約相手の正式名称、開始日、満了日、更新の有無と判断基準を確認します。施設名が同じでも契約する法人が同じとは限らないため、以前の勤務期間を調べるときも契約書面の使用者を見てください。
出典:厚生労働省・令和8年改正対応モデル労働条件通知書、厚生労働省・無期転換Q&A
2024年4月からの明示ルールでは、有期契約の締結・更新時に更新上限の内容を確認することになります。厚生労働省のQ&Aは、上限がない旨の明示までは義務ではないと説明しており、上限欄の空欄だけで「上限なし」と判断することはできません。
出典:厚生労働省・労働条件明示改正リーフレット、厚生労働省・令和5年改正労働条件明示Q&A
更新上限は、更新できる回数や通算契約期間の限度などを指します。契約の長さが1年、更新上限が別に定められている場合もあるので、「1年契約だから1年で必ず終わる」「上限までは必ず更新される」と読み替えないでください。
出典:厚生労働省・令和8年改正対応モデル労働条件通知書、厚生労働省・令和5年改正労働条件明示Q&A
| 分けて聞くこと | 本人の資料で確認する内容 | 読み違えやすい点 |
|---|---|---|
| 今回の契約期間 | 開始日と満了日 | 更新後の契約まで確定したと考える |
| 更新の有無・判断基準 | 更新する場合、判断に使う基準 | 更新の可能性を更新の約束と考える |
| 更新上限 | 通算期間、更新回数、終期などの定めと数え始め | 上限欄の空欄を上限なしと考える |
| 更新判断の時期 | いつ、誰が、どの方法で本人へ伝えるか | 会社の判断予定日を法定予告期限と同じものにする |
有期で施設長の内定を受けた方は、施設長の内定後確認で、候補期間や登用の説明も照合できます。ケアマネならケアマネの内定条件確認を使い、担当開始・兼務・支援の予定と、契約更新の日付を区別してください。
ケアマネとして経験を生かす応募先も検討するなら、経験と希望する勤務条件の整理を参照してください。働きたい期間に加えて担当したい仕事を言葉にし、契約条件と両方を満たせるか確かめられます。

契約と更新の時点を確認する表
ここからは、2026年11月1日から1年の契約を提示された人の架空例です。本人は少なくとも数年働きたいと考えていますが、通知書案は「更新する場合がある」で、上限欄には記載がありませんでした。
通知書案、参照する規程、採用担当との回答メモを集め、同じ法人・同じ採用条件で読み合わせます。次の表では、将来の予定を確定済みにせず、何をいつまでに聞くかを残しています。
| 時点・条件 | 今回の契約にある記載 | 希望との一致・未確認 | 確認先と次の期限 |
|---|---|---|---|
| 契約主体 | 株式会社Aが使用者。施設の名称と別に記載 | 今回の雇用主は確認できる。過去の在籍期間はない設定 | 採用担当へ、本人宛て最終書面でも同じ法人か確認 |
| 開始・満了 | 2026年11月1日〜2027年10月31日 | 今回の1年は分かる。数年の勤務は未確定 | 採用担当へ、受諾判断前に更新の説明を依頼 |
| 更新判断 | 更新する場合がある。勤務成績・業務量等で判断 | 判断基準の記載あり。判断者と説明時期は未確認 | 人事担当へ、判断予定と本人への連絡方法を質問 |
| 更新上限 | 通知書案の上限欄に記載なし | 上限の有無、定めがある場合の内容が未確認 | 人事担当へ、参照規程と合わせて確認する日を相談 |
| 無期転換の申込機会 | 今回が初回の1年契約という設定 | この契約だけで通算5年超とはならない。将来の更新は未確定 | 更新時に各契約の期間と申込機会の説明を確認 |
| 無期転換後の条件 | 今回の案には転換後条件の説明なし | 今回の初回契約と将来の転換を区別。今は将来条件が未確認 | 申込権が発生する更新時の明示と、現時点の制度案内を分けて聞く |
| 正社員登用 | 面接では登用制度があると説明 | 申込み条件、選考、登用後の勤務は未確認 | 採用担当へ制度資料を依頼。無期転換と別に質問 |
この人が受諾前に尋ねるのは、「更新上限はありますか。ある場合は期間・回数のどちらで、いつから数えますか」です。数年働きたい希望も伝え、更新基準と判断時期を合わせて確認します。
| 架空の回答 | 希望との比較 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 回答A。現行規程に更新上限はなく、毎回の更新判断方法も説明された | 上限なしは確認できるが、数年後までの更新は保証されない | 今回の条件を受け入れられるか検討し、次の判断時期を控える |
| 回答B。通算契約期間は3年までと説明され、根拠規程が示された | 初回から合計3年という設定なら、更新が続く場合の終期は2029年10月31日 | 長く働きたい希望との差を確認し、登用等の別制度を質問してから受諾を判断する |
無期転換を申し込める日と、無期で働き始める日を分ける
一般則では、同一使用者との有期契約が繰り返し更新され、通算契約期間が5年を超えると、労働者の申込みにより無期契約へ転換します。申込みはその有期契約の期間中に行い、無期契約で働き始めるのは申込み時の契約が満了した翌日です。
無期転換申込権が発生する契約の更新時には、申込機会と転換後の労働条件を明示するルールがあります。申し込まないまま有期契約を更新した場合も、申込権が発生する更新のたびに確認する事項です。
二つ目は、2021年4月1日から同じ法人と1年契約を途切れずに更新し、特例の適用もないと仮定した架空例です。6件の契約書面を集め、開始日、満了日、使用者、空白期間の有無を並べます。
| 契約 | 期間 | 今回までの契約期間の合計 |
|---|---|---|
| 1回目の契約 | 2021年4月1日〜2022年3月31日 | 12か月 |
| 2回目の契約 | 2022年4月1日〜2023年3月31日 | 24か月 |
| 3回目の契約 | 2023年4月1日〜2024年3月31日 | 36か月 |
| 4回目の契約 | 2024年4月1日〜2025年3月31日 | 48か月 |
| 5回目の契約 | 2025年4月1日〜2026年3月31日 | 60か月 |
| 6回目の契約 | 2026年4月1日〜2027年3月31日 | 72か月。5年の60か月を超える契約 |
この例では、6回目の契約期間である2026年4月1日から2027年3月31日まで、無期転換を申し込めます。2026年10月15日に申し込む設定なら、その時点で無期契約が成立し、2027年4月1日から無期契約で働くことになります。
2026年10月15日は説明用の申込日で、法定の一律期限ではありません。72か月はその日までに働いた月数でもないので、申込権が生じる契約と、申込みの時点、無期就労の開始を別々に記録します。
| この架空例の未確認事項 | 人事担当への質問 | 回答で変える行動 |
|---|---|---|
| 申込み方法と受領の確認 | 申出先と方法、会社が受け取ったことの確認方法を教えてください | 回答Aなら案内に沿って申し込み、記録を残す。回答Bで窓口不明なら契約満了前に労働局へ相談する |
| 無期転換後の職務・賃金 | 現在と変わる条件、適用する規程、勤務場所・業務の範囲を説明してください | 回答Aで条件が示されれば現在の条件と照合。回答Bで正社員登用と混同した説明なら別の制度として聞き直す |
無期転換と正社員登用、定年後の特例は別に確認する
無期転換でなくなるのは契約期間の定めで、正社員になることや給与が増えることと同義ではありません。転換後は別段の定めがある場合を除き従前の条件と同じとされるため、本人に適用する規程や変更内容を確認してください。
契約の空白期間がある場合は、それ以前の期間を通算するかについて別の確認が必要です。定年後に引き続き雇用される人にも、認定計画などを前提とする特例があるため、年齢だけや別法人への通常の再就職だけで対象と決めないようにしましょう。
出典:厚生労働省・無期転換Q&A、厚生労働省・無期転換の特例
育児や家族の介護に関する制度を使う予定がある方は、育児・介護制度と転職時期の確認で、利用したい時期と雇用条件を照合できます。契約の更新見込み、休業等の利用条件、給付の条件を別々に確認してください。
上限の変更や雇止めの説明は、その時点で記録する
最初の契約締結後に更新上限を新設・短縮しようとする場合、使用者には事前に理由を説明するルールがあります。旧資料と変更後の資料、説明日を保存し、何がいつ変わるのかを質問してください。
出典:厚生労働省・有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準
雇止めの30日前予告は、3回以上更新した場合、又は雇入れから1年を超えて継続勤務している場合が対象で、あらかじめ更新しないと明示された契約は除かれます。全ての有期契約に同じ予告義務があるわけではなく、予告があっただけで雇止めの有効性が決まるわけでもありません。
出典:厚生労働省・有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準
更新しないと伝えられた場合は、理由の説明、契約履歴、更新に関する従来の説明をそろえて相談しましょう。上限の変更や雇止めの効力、無期転換の対象に疑問があれば、労働局や総合労働相談コーナーに個別の資料を見せて確認できます。
受諾前は、自分が働きたい期間と未回答を照合する
2026年10月1日以降、新たにパートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際は、通常の労働者との待遇差等について説明を求められる旨も書面交付等による明示の対象です。説明を求める権利そのものは従来からあり、今回加わった雇入れ時の明示と区別してください。
改正対応のモデル労働条件通知書には、待遇差等の説明の申出先と、雇用管理に関する相談窓口が別に示されています。有期という名称だけで条件を推測せず、自分が聞きたい内容をどこへ伝えるかも確かめましょう。
今回の契約期間が希望に合うかと、更新や転換について未回答のことを分けて考えてください。受諾判断に必要な説明が残る場合は、回答予定と受諾期限を相談し、後の更新が決まったものとして生活の予定を立てないようにしましょう。
入職後に書面や説明との違いが見つかった場合は、入職後の条件相違を記録する方法で、元の資料と実際の勤務を並べられます。日付と相違点を残して質問すると、今回の契約と次回更新の条件を混ぜずに相談できます。
この記事の執筆範囲
企業で人事部長・経営企画部長を経験しています。介護分野では、人材紹介事業の運営・求職者対応と、介護施設向けの採用代行に携わっています。
現在は中小企業診断士事務所で、HR DDなど人材と経営に関わる支援を行っています。この記事の記入例は、書き方や確認手順を示す仮想例です。
参考資料と確認日
本文の根拠資料は2026年10月4日に確認しました。確認手順や質問例は、読者が自分の条件を整理するための編集上の提案です。
出典:厚生労働省・有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準
書き込み用の資料
手元で整理する場合は、内定条件三点照合表(PDF)を使ってください。必要な記入欄に、ご自身の状況を書き込んでください。
