介護施設長の年収をどう比べるか|公的統計の範囲と給与条件

まっく部長
中小企業診断士 元職業紹介責任者 元医療介護企業 人事責任者
公開日:

職業紹介責任者としてケアマネジャーなど資格職の職業紹介に携わり、 医療介護企業の人事責任者として採用・人事制度設計・労務管理を担当。 介護管理職の転職・採用・キャリア情報を、 公的資料と採用側・紹介側の実務経験をもとに執筆・編集しています。

介護施設長の年収を比べるときは、提示額に含まれる給与と、その支給条件をそろえます。月額固定分、条件付きの手当や賞与、未確認の項目を分ければ、今の資料で比べられる範囲が分かります。

確認表から読む場合は、給与の内訳と条件の比較例をご覧ください。本文の前提と注意点も合わせて確認できます。

公的統計を読むときも、施設長だけの数字か、広い意味の管理職を含む数字かを確かめます。この記事では給与の相場を決めつけず、手元の条件を整理して、採用担当者への質問まで進める方法を説明します。

目次

まず、何の年収を比べているかをそろえる

同じ「年収」でも、実際に支給された過去の額と、採用側が想定した将来の額では意味が違います。現職の源泉徴収票にある金額を、転職先の登用後の上限額とそのまま比べても、入職時の条件は分かりません。

比較表の冒頭には、雇用主、担当施設、入職時の役職、雇用形態、比較する期間を書きます。候補採用や試用期間がある場合は、その間の条件が提示額に含まれるかを先に確かめてください。

そろえる前提確認する資料・説明比較へ進める状態
給与の時点現職の直近資料と、自分に適用される入職時の条件過去の支給実績と将来の提示条件を区別できる
期間と単位月額か年額か、入職後12か月か通常年度か双方を同じ期間の額面で並べられる
役職と勤務候補期間、兼務、夜勤、担当施設数、所定勤務金額がどの仕事と勤務を前提にするか分かる
支給の前提勤務や資格の条件、適用開始日、試用期間中の差確認済みと未確認を分けて残せる
条件をそろえるための整理例です。統計上の給与定義や法定の明示事項の全一覧ではありません。

本稿の金額は、税金や社会保険料を差し引く前の額面で扱います。通勤費などの実費相当額、退職金、福利厚生は別欄に置き、給与の小計へ混ぜない方法で比較します。

給与と別欄に置いた退職金を確認する場合は、退職金の制度と手続きを整理する手順を使えます。法人の制度や共済の名称と、自分への適用を確かめ、未確認の額を給与の小計へ足さないようにしてください。

公的統計は、表の対象と給与の定義から読む

介護労働安定センターの令和7年度介護労働実態調査は、2026年7月29日に公表されました。調査対象期日は原則2025年10月1日で、2026年10月4日現在、令和8年度調査は実施中です。

出典:介護労働安定センター「介護労働実態調査」

公表された年と、給与を調べた時点は分けて読みます。新しい報告書が出ていても、読んでいる表が施設長の年収を扱うかは、職種名、集計対象、注記を確かめるまで分かりません。

例えば、厚生労働省の令和6年度介護従事者処遇状況等調査の第83表は、介護職員等処遇改善加算を取得している事業所の、月給・常勤の介護職員を職位別に集計した表です。「管理職」には主任やリーダーなどが含まれ、施設長だけの平均ではありません。

出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」

この表の平均給与額には、基本給と手当に加え、4月から9月に支給された一時金の6分の1が含まれます。その月の固定給とも、施設長の年間収入とも異なるため、数字だけを12倍して自分の提示年収と比べると、対象と計算の前提がずれます。

出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」

統計で確かめる点資料内で読む場所読み違えを防ぐ問い
誰を集計したか職種、職位、事業所の対象、雇用・勤務形態施設長のみか。主任等も含むか
何を合計したか基本給、手当、一時金の定義と注記月額固定分か。一時金を月割りした額か
いつの数値か調査基準日、給与対象月、公表日公表年を給与の対象年と取り違えていないか
自分とどこが違うかサービス種類、常勤・非常勤等の区分自分の役割・勤務条件と同じ対象か
統計を個別の提示条件に使えるか判断するための確認項目です。

平均や中央値は、特定の対象を集計した結果です。対象が違う数字を根拠に「この額を下回るから不利」と決めず、まず自分に適用される給与と仕事の条件を確認してください。

提示年収を三つの状態に分ける。固定:本人への適用額・支給条件を確認同じ期間の額で比較する。条件付き:夜勤回数・業績などで変わる額固定分とは別に記録する。未確認:金額や条件の回答がまだないゼロにせず採用担当へ質問する

給与の内訳を「固定・条件付き・未確認」に分ける

「固定」は、自分への適用額と支給条件が確認でき、決めた勤務条件の下で毎月支給される部分です。「条件付き」は夜勤回数や業績などで変わる部分、「未確認」は金額や適用条件の回答がそろっていない部分として整理します。

これは比較用の区分で、手当名だけでは決められません。資格手当でも資格保有だけで支給されるのか、特定の業務を担当する必要があるのかを確認してから分類します。

給与項目確認する中身表への記入
基本給・役職手当入職時の金額、適用開始日、候補・試用期間中の差確認できた月額を固定欄へ
資格・地域等の手当自分が対象になる条件、異動や職務変更時の扱い自分への適用が分かるまで未確認
夜勤・宿直・待機等の手当担当の有無、単価、回数、他手当への内包回数等で変わる部分は条件付き
賞与・業績連動部分算定基礎、対象期間、支給条件、初年度の扱い月額固定分と別欄に記録
同じ名称の手当でも法人によって条件が違うため、説明資料と回答日を添えます。

想定年収の内訳が分かっても、月給へ含まれている手当をもう一度加えないようにします。総額と内訳が一致しないときは、自分で差額の項目を作らず、採用側へ計算の内訳を確認してください。

条件の内訳を確かめたうえで交渉したい場合は、年収交渉の根拠と相談内容を整理する方法を使えます。経験と新たに担う責任を提示条件に対応させ、未確認の金額を確定分へ足さずに相談してください。

固定残業代と夜勤手当を重複して数えない

固定残業代を含む募集では、それを除いた基本給、固定残業代の金額と対象時間等、超過分の追加支給を確かめます。厚生労働省の募集時の明示資料でも、これらを分けて表示することが示されています。

出典:厚生労働省「募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!」

例えば、別の仮想条件として「月給32万円、その内数として固定残業代4万円」と説明された場合、合計は32万円です。内訳の4万円を再び足した36万円ではなく、固定残業代を除く部分28万円と、固定残業代4万円に分けて記録します。

固定残業代の対象時間は、実際の残業予定を示す数字とは限りません。金額の表とは別に、通常月の勤務、欠員時の対応、超過した場合の記録と支払いを質問に残してください。

昇格に伴って夜勤が減る場合は、増える役職手当と減る夜勤手当を別々に確認します。以前の夜勤手当をそのまま足し続けたり、施設長なら必ず夜勤がなくなると考えたりすると、比較の前提が変わります。

夜勤の単価が分かっていても、回数が未定なら、その月の手当総額は未確認です。勤務の負担も合わせて比べられるよう、通常の担当回数と、欠員時に追加で入る可能性を分けて聞いてください。

会社から管理監督者として扱う説明があり、勤務と賃金の関係を確かめたい場合は、管理監督者扱いの確認手順を参照できます。給与の内訳と合わせて、会社の説明、実際の勤務、未回答の点を分けて記録してください。

賞与は月数だけでなく、自分に適用される条件を聞く

「賞与あり」「前年実績○か月」という記載だけでは、自分の支給額は決まりません。算定の基礎が基本給なのか別の基準額なのか、評価や業績で変わるのか、初年度にも同じ扱いかを確認します。

沖縄労働局の相談事例でも、賞与は金額や支給条件、支給日に在籍する要件などの規程を確認する必要が示されています。一般的な説明から自分の支給・不支給を判断せず、採用側に適用される規程と条件の説明を求めてください。

出典:沖縄労働局「労働相談事例 賃金・賞与・退職金Q3」

入職初年度は、算定期間の一部しか在籍していない場合があります。通常年度の賞与見込みと分け、入職日を伝えたうえで初回・次回それぞれの対象期間、支給日、金額の決まり方を聞きます。入職時期による違いは、転職初年度の固定額と賞与の比較で、勤務対象期間と支給日を分けて確かめてください。

仮想例で、比べられる金額と残る質問を確認する

次は、計算方法を示すために作った仮想例です。実在の求人や給与水準の目安ではなく、A・Bとも月初入職、毎月満額、12か月同条件で勤務し、欠勤等の控除や改定がないと仮定します。

Aは基本給26万円、役職手当2万円、資格手当2万円、Bは基本給28万円、役職手当3万円が毎月の支給対象として確認できた設定です。固定残業代は両方とも含まれず、賞与条件は両方とも未確認とします。

項目Aの条件Bの条件比較時の扱い
基本給260,000円/月280,000円/月固定
役職手当20,000円/月30,000円/月固定
資格手当20,000円/月対象なしと確認Aは固定、Bは加算なし
月額固定分300,000円310,000円各内訳を一度ずつ合計
入職後12か月固定額小計3,600,000円3,720,000円同じ勤務条件の月額固定分×12か月
賞与未確認未確認小計に含めず、総年収は未確定
仮想例。通勤費等、変動手当、時間外等の追加支給、一時金、控除は計算に含みません。

この条件で比べられるのは、Bの月額固定分が1万円、入職後12か月固定額小計が12万円高いことまでです。賞与をゼロとみなして総年収の優劣を決めたり、Aの賞与が多そうだという印象で差額を埋めたりはできません。

仮に読者が「夜間対応を減らし、毎月の固定額も確認してから選びたい」と考えているなら、次はBの夜間対応と両社の初年度賞与を質問します。固定額の差と、まだ答えのない条件を分けることで、追加確認が必要な理由を伝えられます。

残った確認事項誰に・何を聞くか次の行動
A・Bの賞与法人の採用担当へ、入職予定日を示して初回の条件と根拠資料を依頼回答までは総年収を未確定と残す
Bの夜間対応運営担当へ、通常の担当日と欠員時の出勤、代行者を質問希望に合う勤務かを面接で確かめる
提示額の最終条件条件を決める担当へ、個別の書面と募集時の説明の差を確認差が解消してから受諾を判断する
仮想例の続きです。未確認は条件不一致を意味せず、回答後に判断を更新します。

施設長から一般職へ戻る案を比べている場合は、役職を外した後の給与・夜勤・責任の比較も使えます。役職手当や夜勤手当の増減を、変更後も担当する仕事と対応させて確認してください。

比較表を完成させてから、次の判断へ進む

比較表の各行には、資料名、確認日、回答した部署や役職を添えます。紹介担当者の説明であれば、法人の誰に確認した内容かも残すと、後で条件が変わったときに聞き直す相手が分かります。

選考中に当初の条件が変わった場合は、変更内容の明示が必要です。契約時の労働条件明示とも照合し、月給の内訳や適用開始日など、自分の判断に必要な違いを確かめてください。

出典:厚生労働省「募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!」

給与の内訳がそろったら、初年度は入職後12か月の支給時期を、働き方は兼務と夜間対応を確認します。自分が外せない条件に回答がない場合は、採用窓口に回答予定と受諾期限を相談し、推測で比較を終えないようにしてください。給与以外の勤務負担は年間休日と勤務時間の比較、最終提示との相違は施設長求人の内定後確認を使うと、金額だけでは決められない条件を整理できます。

よくある質問

介護職員の管理職平均を、施設長の平均年収と呼べますか。

その表が施設長だけを集計したものでなければ、施設長平均とは呼べません。職種・職位・給与の定義を読み、自分と違う対象は区別してください。

月給の高い方を選べば、年収も高くなりますか。

月額固定分の大小は比べられても、賞与や変動手当が未確認なら総年収は決まりません。役割、勤務、初年度の支給条件まで確認して判断します。

固定残業代があると、その金額を月給へ足しますか。

月給に含むと説明されている金額は、内訳として分けて記録します。総額へ重ねて足さず、対象時間と超過分の扱いも確認してください。

施設長候補の登用後の年収で比較してよいですか。

まず候補期間の条件で比較し、登用後は開始時期と適用条件を別欄に残します。登用が決まっていなければ、その増額を固定額へ入れないでください。

この記事の執筆範囲

企業で人事部長・経営企画部長を経験しています。介護分野では、人材紹介事業の運営・求職者対応と、介護施設向けの採用代行に携わっています。

現在は中小企業診断士事務所で、HR DDなど人材と経営に関わる支援を行っています。この記事の記入例は、書き方や確認手順を示す仮想例です。

参考資料と確認日

本文の根拠資料は2026年10月4日に確認しました。確認手順や質問例は、読者が自分の条件を整理するための編集上の提案です。

出典:介護労働安定センター「介護労働実態調査」

出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」

出典:厚生労働省「募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!」

出典:沖縄労働局「労働相談事例 賃金・賞与・退職金Q3」

書き込み用の資料

手元で整理する場合は、年収条件の分解比較表(PDF)を使ってください。必要な記入欄に、ご自身の状況を書き込んでください。

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