転職前に退職金を確かめるときは、「退職金あり」という表示から、制度の正式名称と自分への適用を確認してください。同じ職場で複数の制度に加入している場合もあり、受取り、期間の合算・通算、次の職場での加入は別々に整理する必要があります。
手続きの前に、退職金の制度と手続きを確認する表へ進めます。現職と応募先を一制度ずつ分け、本人の加入状況、提出済みの書類、窓口へ聞く期限を残すための表です。
制度があることと、自分が対象であることを分ける
退職金は、どの職場でも同じ条件で支給される制度ではありません。茨城労働局も、支給の条件や計算方法などを契約で定めるものとして説明しており、まず自分に適用される規程や契約を確かめることが出発点になります。
現職の人事担当には、制度の名称、対象となる職員、計算に使う期間、支給時期を尋ねます。「制度なし」「対象外」という説明だけでは以前の約束や適用規程との関係が分からない場合もあるため、説明の根拠となる資料を確認してください。
| 確認する制度 | 最初に確かめること | 同じものとして扱わないこと |
|---|---|---|
| 法人独自の退職金制度 | 自分に適用される規程、対象期間、算定方法、支給時期 | 外部共済の加入期間と、法人の勤続期間が必ず同じになるとは限らない |
| 福祉医療機構(WAM)の退職手当共済 | 本人と配属施設の加入状況、被共済職員としての期間、手続きの種類 | 社会福祉法人に勤めているだけで、全員加入していると判断しない |
| 中小企業退職金共済(中退共) | 本人の加入、掛金納付月数、次の勤務先での加入と通算の条件 | WAMの合算と、名称や申出方法を共通にしない |
| 地域の福祉共済等 | 正式名称、運営主体、自分の加入、転職時の規程 | 「共済」という呼び方だけで他制度へ引き継げると考えない |
厚生労働省の就業規則の案内でも、退職手当の定めをする場合の事項として、適用範囲、計算・支払方法、支払時期を挙げています。制度名と自分の適用規程が分かると、応募先の説明と何を比べるべきかが明確になります。
法人の勤続期間と、共済で数える期間を区別する
入職した日から現在までの勤続期間と、退職金制度で算定に使う期間が同じとは限りません。加入日、勤務形態の変更、加入を中断した期間などを、自分の記録と担当者の説明で照合してください。
WAMの合算には、前の勤務先で被共済職員として継続して1年以上勤務していることなどの条件があります。この継続在籍の条件は、算定対象となる月を12か月分積み上げることと同じではないため、単に法人の勤続年数や給与明細の枚数で判定しないでください。
現職の期間が次の法人独自制度へ自動的に足されるわけでもありません。応募先には、入職後いつからどの制度の対象になり、以前の勤務期間をどのように扱うかを、現職の支給条件とは別に聞いてください。
WAMの合算は、請求書を提出する前に確認する
WAMには、転職等で途切れる前後の被共済職員期間を合わせる「合算」の仕組みがあります。退職手当金を請求していないこと、退職した日から起算して3年以内に対象施設へ加入要件を満たして就職すること、機構への申出など、複数の条件を確かめる必要があります。
WAMの令和8年度マニュアルは、退職手当金請求書を提出した場合、合算制度へ変更できないと説明しています。合算を検討するなら請求書の提出前に条件を確認し、「まだ振り込まれていないから変更できる」と判断しないでください。
勤務先へ出す退職届と、WAMの退職手当金請求書は分けて確認します。受け取った書類の名称と提出先、提出したかどうかを確かめ、不明なら現職の事務担当とWAMへ問い合わせてください。
ここで挙げた条件は一部で、転職先の法人がWAMと契約しているだけでは足りません。本人の雇用条件と配属施設で加入できるか、退職事由等の条件、利用申出まで含めて現行の案内に沿って確認してください。
出典:WAM・令和8年度マニュアル 制度概要編、WAM・令和8年度マニュアル 退職手続き
また、WAMの「通算」には、施設運営上の理由による事前合意などを前提にした継続異動や、法人の合併等に伴う取扱いがあります。自己都合の転職を同じ手続きと考えず、通常の転職による合算なのか、法人側が進める変更手続きなのかを確かめましょう。
運営法人の変更も予定されているなら、法人変更と雇用条件の確認で変更の内容を先に整理できます。雇用契約の扱いと、共済の加入・期間・手続きがどうなるかは別々に質問してください。

退職金の制度と手続きを確認する表
次のAさんは、WAM加入中の職場を退職し、次もWAMの対象施設へ移る予定という仮想例です。次の職場から「共済はあります」と聞いていても、本人の加入条件と請求書の提出状況が分かるまでは合算できると決めません。
| 制度名・実施主体 | 本人の対象期間・加入状況 | 選べる手続きと条件 | 確認窓口・期限・次の行動 |
|---|---|---|---|
| 現職のWAM退職手当共済 | 本人は加入中。継続在籍期間と算定対象月は事務担当へ照合予定 | 退職手当金の請求と合算を検討中。請求書は未提出と本人が把握 | 現職事務担当とWAMへ、合算の全条件と退職時に行う申出を確認 |
| 転職先のWAM退職手当共済 | 法人の制度案内はあるが、本人の雇用条件と配属施設の加入は未確認 | 入職予定日と加入要件、機構への申出が必要となる時点を確認する | 転職先事務担当へ加入可否・予定日を聞き、WAMへ期限の起算点と手続きを照会 |
| 現職に別の退職金制度があるか | WAM以外の制度の有無をまだ確認していない | 法人独自制度や地域共済があれば別行で受取り等を確認する | 現職人事へ制度一覧と適用規程を確認。WAMの回答を他制度へ流用しない |
Aさんの条件を窓口で確認できたら、受取りと合算のどちらを選ぶかを、その説明と自分の予定に基づいて検討します。転職先で本人が加入対象にならない、または請求書をすでに提出していたと分かった場合は、合算できる前提を外してWAMへ利用できる手続きを確認してください。
再就職日が変わる場合も、最初に受けた説明をそのまま使わず、期限の起算点と加入予定日を照合し直します。提出方法は当年度のWAMの案内を確かめ、旧勤務先から説明を受けただけで、機構への申出と次の勤務先での加入が完了したと考えないでください。
出典:WAM・令和8年度マニュアル 制度概要編、WAM・令和8年度マニュアル 退職手続き
中退共と地域共済は、それぞれの条件を確認する
中退共同士の転職でも、条件を満たして通算の申出を行う仕組みがあります。旧勤務先を退職した後3年以内に新勤務先で被共済者となること、旧勤務先分の退職金を請求していないこと、掛金納付月数や退職事由に関する条件を、中退共の案内で確認してください。
この「3年以内」は新勤務先で被共済者となる時点に関する条件として確認し、すべての申出期限を同じ3年とまとめないでください。新旧の加入状況と掛金納付月数、必要な書類、提出先を中退共へ確認し、WAMの合算の書類を使わないようにしましょう。
地域共済も独立して確認します。例えば東京都社会福祉協議会の従事者共済会は、WAMとは異なる制度であり、両方に加入している場合はそれぞれの手続きが必要だと案内しています。
仮想例 現職に二制度、応募先に中退共がある
Bさんは現職で法人独自制度と地域共済に加入し、応募先では中退共があると説明された仮想例です。「転職先にも共済があるから続く」とまとめず、現職の二制度と転職先の中退共を別々に記録します。
| Bさんが確認する制度 | 残っている質問 | 回答を得た後の行動 |
|---|---|---|
| 現職の法人独自制度 | 本人の対象期間、退職時の算定方法と支給時期はどの規程によるか | 適用される規程を確認し、受取りに必要な手続きを記録する |
| 現職の地域共済 | 今回の転職先が継続加入等の対象か。受取り前・請求前に必要な確認は何か | 継続対象でないとの回答なら受給手続きを確認。対象になり得るとの回答なら条件・届出先・期限を確かめる |
| 応募先の中退共 | 本人はいつから加入するか。現職の正式な制度との間に利用可能な手続きがあるか | 法人担当と中退共の正式回答で確認。名称の似た別共済の案内を根拠にしない |
どこか一つの窓口から回答を得ても、残る制度まで確認済みにしないでください。回答が食い違う場合は、制度名と手続き名を添えて両方の窓口へ照会し、どの条件が未確認なのかを残します。
転職条件の比較には、未確認の退職金を足さない
退職金の受給見込みを聞いた場合は、対象制度、前提となる期間、概算か確定額かを確認します。金額が分からないことをゼロと決めたり、応募先の「退職金あり」を保証された受給額として給与に足したりしないでください。
在職中の給与は、施設長の給与条件の見方で固定分と条件付きの支給を分けて比較できます。内定後は、施設長・管理職の条件照合で、退職金制度についての説明も最終資料と突き合わせてください。
転職せずに役職や勤務形態を変える場合も、制度への加入や対象範囲が変わるかを確認します。施設長から一般職へ戻る条件の比較と合わせて、給与だけでなく退職金制度の扱いも人事へ尋ねてください。
- 社会福祉法人へ転職すればWAMは引き継げますか
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法人の種類だけでは判断できません。本人の加入、配属施設、雇用条件、退職から再加入までの時期と申出など、当該手続きの条件をWAMと勤務先へ確認してください。
- 入金前ならWAMの請求を合算へ変更できますか
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WAMは、退職手当金請求書を提出した場合には合算制度へ変更できないと案内しています。入金の有無で判断せず、請求書の提出状況を確かめ、提出前に検討する場合も現行の条件を確認してください。
この記事の執筆範囲
企業で人事部長・経営企画部長を経験しています。介護分野では、人材紹介事業の運営・求職者対応と、介護施設向けの採用代行に携わっています。
現在は中小企業診断士事務所で、HR DDなど人材と経営に関わる支援を行っています。この記事の記入例は、書き方や確認手順を示す仮想例です。
参考資料と確認日
本文の根拠資料は2026年10月4日に確認しました。確認手順や質問例は、読者が自分の条件を整理するための編集上の提案です。
