介護管理職の需要と将来性|人材不足・法人集約・役割変化から考える

まっく部長
中小企業診断士 元職業紹介責任者 元医療介護企業 人事責任者
公開日:

職業紹介責任者としてケアマネジャーなど資格職の職業紹介に携わり、 医療介護企業の人事責任者として採用・人事制度設計・労務管理を担当。 介護管理職の転職・採用・キャリア情報を、 公的資料と採用側・紹介側の実務経験をもとに執筆・編集しています。

※本記事は2026年8月12日時点の厚生労働省による介護職員必要数、2040年に向けたサービス提供体制の検討、生産性向上・介護テクノロジー施策、現在の介護管理職求人等をもとに作成しています。

最初に結論

介護管理職の将来性は、介護職員が不足しているという理由だけでは判断できません。

2040年に向けて介護サービス需要は地域ごとに異なり、事業者間の協働化・大規模化、生産性向上、ICT・AI活用も進みます。

そのため、今後は単に一施設のシフトを組み、人員配置を管理するだけでなく、採用・定着、数値、業務改善、DX、複数拠点、地域・法人間連携まで扱える管理職の価値が相対的に高まりやすいと考えられます。

介護業界は高齢化が進むから将来性がある、と説明されることがあります。

方向としては間違いではありませんが、管理職の将来性まで考える場合は、それだけでは不十分です。

介護職員の必要人数が増えることと、施設長・管理者・エリアマネージャー等のポストが同じ割合で増えることは別だからです。

医療介護領域の採用・人事・組織設計に携わった立場から見ると、将来性を考えるときは、求人の有無だけではなく、介護管理職に何を任せる方向へ市場と政策が変わっているかを見ることが重要です。

目次

介護管理職の需要は介護職員不足だけでは判断できない

まず、介護職員の人材不足と、介護管理職の需要を分けます。

厚生労働省は、第9期介護保険事業計画に基づき、今後必要となる介護職員数を公表しています。

厚生労働省:第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数

年度介護職員の必要数2022年度比
2022年度約215万人基準
2026年度約240万人約25万人増
2040年度約272万人約57万人増

介護サービスを支える人材を今後も確保する必要があることは明確です。

ただし、この約272万人は介護職員の必要数です。

施設長、事業所管理者、エリアマネージャー、本部管理職が2040年度に何万人必要かを示した数字ではありません。

そのため、約57万人増える必要があるから介護管理職も同じ割合で不足する、とは読みません。

介護関係職種の求人倍率は高いが管理職限定ではない

介護労働市場全体で人材確保が難しいことは、求人倍率からも確認できます。

厚生労働省の資料では、介護関係職種の有効求人倍率は全職業より高い水準で推移し、令和6年度は全国で約3.97倍です。

厚生労働省:介護人材確保の現状等

ただし、これも施設長・管理者だけの求人倍率ではありません。

数字の読み分け
  • 約272万人:2040年度に必要と推計される介護職員数
  • 約3.97倍:介護関係職種全体の有効求人倍率
  • 管理職求人:現在の外部採用市場に施設長・管理者等の求人が存在することを確認する材料

この3つは同じ指標ではありません。

現在も施設長・介護管理職求人は存在する

管理職限定の全国需要予測はありませんが、2026年8月現在も、施設長・ホーム長・管理者・ブロック長・エリアマネージャー等の外部求人は確認できます。

たとえば、ジョブメドレーの施設長・介護管理職カテゴリでは、大阪府だけでも約600件規模、大阪市でも約260件規模の公開求人を確認できました。

ジョブメドレー:施設長/介護管理職求人

ただし、求人件数は随時変動し、施設種別・雇用形態・役職の範囲も混在します。

この数字を、介護管理職の全国需要統計として使うことはしません。

現在も外部採用市場が存在することを確認する材料として使います。

需要があることと条件の良い求人が多いことは別

介護管理職求人があるからといって、管理職になれば条件が良いとは限りません。

  • 基本給・役職手当
  • 採用・評価・予算等の権限
  • 現場兼務
  • 夜勤・オンコール
  • 担当施設数
  • 転勤・出張
  • 数値責任

などは求人ごとに違います。

需要がある職種であることと、自分にとって条件の良い求人があることは別と考えてください。

2040年まで介護需要が全国一律に増えるわけではない

介護管理職の将来性を考えるうえで、特に重要なのが地域差です。

厚生労働省の「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ」では、地域によって医療・介護需要の動きが異なることを前提にしています。

厚生労働省:2040年に向けたサービス提供体制等のあり方

本記事では、この方向を次の3市場に整理します。

大都市部|介護需要の増加へ対応する管理

大都市部では、医療・介護需要ともに今後も増える地域があります。

こうした地域では、管理職にとって次のテーマが重くなりやすいと考えられます。

  • 人材確保
  • 新規拠点
  • 複数拠点管理
  • 入居・稼働
  • 標準化
  • DX

施設を運営するだけでなく、増える需要へ対応するための供給体制づくりが重要になります。

一般市|当面の需要増とその後の縮小を見据える

一般市では、介護需要が当面増加した後、人口構造の変化によって減少へ転じる地域があります。

その場合、単純な拠点拡大だけでなく、既存資源の活用、サービス再編、効率化、複数サービス連携等が重要になります。

中山間・人口減少地域|サービスを維持する管理

中山間地域や人口減少地域では、高齢者数そのものも減少し、医療・介護需要が低下する地域があります。

ここでは、新しい施設を増やす管理より、限られた人員・設備でサービスを維持する管理の比重が高まりやすいでしょう。

  • 事業所間連携
  • 人材シェア
  • 多機能化
  • 事業所集約
  • 地域連携

などの経験が重要になります。

地域別3市場で介護管理職の将来性を考える

地域需要の方向管理職で重くなりやすいテーマ
大都市部増加しやすい人材確保、新規拠点、多拠点管理、稼働、DX
一般市当面増加後に減少する地域もある既存資源活用、再編、効率化、複数サービス連携
中山間・人口減少地域需要低下地域ありサービス維持、人材共有、協働、地域連携

したがって、介護管理職の将来性を全国一律に語ることはできません。

2040年に向けて介護事業者の協働化・大規模化が政策テーマ

厚生労働省は、2040年に向けた介護サービス提供体制の論点として、介護事業者の協働化・大規模化を取り上げています。

厚生労働省:介護事業所の協働化・大規模化

協働化には、単なる法人合併だけでなく、複数事業者が協力して人材確保・育成、間接業務、施設・設備、災害対応、地域貢献等を行う考え方があります。

大規模化には、法人内での事業規模拡大、事業所増設、法人間合併、事業譲渡等が含まれます。

法人集約は小規模法人がなくなる意味ではない

ここでいう法人集約は、協働化、事業者間連携、大規模化、事業所集約など、事業運営をまとめたり連携を強めたりする複数の動きを含む表現です。

国が小規模介護事業者をすべて淘汰し、大手法人へ統合しようとしているという意味ではありません。

厚生労働省も、小規模事業者が地域に根ざしてサービスを提供することの重要性を認識したうえで、協働化・連携・大規模化等を選択肢として示しています。

より正確には、一法人だけですべての経営課題を解決する方法に加え、他法人との連携や規模拡大を組み合わせる方向が政策上強まっていると考えるのが適切です。

法人集約・協働化で管理職は減るのか

一律には判断できません。

事業所が統合されれば、単施設の管理者ポストが減るケースは考えられます。

一方、法人規模が広がると、複数拠点管理、施設長支援、標準化、人材開発、業務改善、本部企画等の役割が必要になる場合があります。

つまり、管理職のポストが単純に増える・減ると考えるより、管理職の役割構成と担当範囲が変わると捉える方が現実的です。

協働化・大規模化で価値が高まりやすい管理経験

以下は厚生労働省が管理職要件として直接定めたものではなく、政策方向から本サイトが整理した実務上の推論です。

  • 複数施設の業務標準化
  • 複数拠点管理
  • 共同採用・共同研修
  • 共通システム導入
  • 施設長・管理者支援
  • 統合・事業譲渡後の現場調整
  • 地域内の法人間連携

一施設を安定運営できる経験に加え、別施設・別法人にも再現できる仕組みを作れることが重要になります。

複数施設管理へ進むキャリアは、介護のエリアマネージャーになるには?必要な経験と施設長からのキャリアパスで詳しく整理しています。

DX・生産性向上で管理職の仕事はどう変わる?

厚生労働省は、介護分野の生産性向上を、単なる人員削減ではなく、介護の質を維持・向上しながら職場環境を改善する取組として進めています。

厚生労働省:介護分野における生産性向上とは

  • 業務整理
  • PDCA
  • 介護ロボット
  • センサー
  • ICT
  • 介護記録
  • データ活用

などが対象になります。

管理職の仕事も、単に人員を配置するだけでなく、業務を分析し、どこへ技術を入れ、職員へどう定着させるかという方向へ広がります。

2026年現在も介護DX政策は進行している

介護DXは将来構想だけではありません。

2026年5月には、厚生労働省が介護テクノロジー等を活用した生産性向上の実証事業で介護事業者等を募集しています。

また、2026年7月31日には、令和8年度デジタル中核人材養成研修の周知・受講勧奨が行われています。

厚生労働省:介護分野の生産性向上に関する最新情報

AIで介護管理職は不要になるのか

現時点で、AIによって介護管理職が不要になる、逆に絶対に代替されない、と断定できる根拠はありません。

AI・ICTが効率化しやすい業務には、次のようなものがあります。

  • 記録
  • 集計
  • 情報共有
  • シフト作成の補助
  • 定型文書
  • 請求事務の一部
  • データ分析の補助

一方、管理職には、何を導入するのか、業務をどう変えるのか、職員が使える状態へどう定着させるのか、品質・事故リスクをどう管理するのかといった仕事があります。

したがって、将来性を考えるうえでは、AIに仕事を奪われないかより、AI・ICTを使って業務を再設計する側へ回れるかを見る方が実践的です。

デジタル中核人材は管理職の必須資格ではない

厚生労働省は、介護テクノロジーを活用した生産性向上を推進できるデジタル中核人材の育成を進めています。

ただし、これは介護施設長・管理者になるための国家資格や全国共通必須研修ではありません。

重要なのは、政策として、課題抽出、業務改善、テクノロジー導入・運用・定着まで担える人材を増やそうとしている点です。

これからの介護管理職に求められやすい6つの経験

ここまでの市場・政策変化を踏まえると、将来価値を高めやすい管理経験は次の6領域へ整理できます。

領域経験例将来重要になる理由
1.採用・定着採用、面接、育成、離職防止介護人材確保が継続課題
2.数値・経営稼働、人件費、収益、予算経営改善・持続可能性が重要
3.改善・標準化業務整理、PDCA、横展開少ない人員で質を維持する必要
4.DXICT、AI、センサー、データ生産性向上政策が進行
5.複数拠点施設長支援、複数施設統括協働化・大規模化との相性
6.地域・法人間連携自治体、医療、他法人、共同施策人口減少地域等で連携重要性が増す

この6領域は、全国共通の管理職資格要件ではありません。

市場・政策変化へ適応するためのキャリア資産として整理したものです。

介護管理職の将来性を6要因で確認する

介護管理職将来性6要因
  1. 介護サービス需要:地域で増えるのか、維持か、減るのか
  2. 介護人材:採用・定着・多様な人材をどう確保するか
  3. 事業者構造:単独運営、協働、多拠点、大規模化がどう進むか
  4. 生産性・DX:業務改善、ICT、AI、データを使えるか
  5. 管理責任:人材、品質、数値、制度まで担えるか
  6. 地域差:大都市、一般市、人口減少地域のどこで働くか

介護管理職だから将来性がある、という一括りではなく、自分の役割と地域をこの6要因へ当てはめて考えてください。

大手法人と中小法人では得られる管理経験が違う

協働化・大規模化の流れがあるからといって、大手法人へ転職すべきという意味でもありません。

大規模法人では、複数拠点、本部職、専門部署、DX投資等の経験を得やすい場合があります。

一方、中小法人では、経営者との距離が近く、採用、数値、行政、営業、地域連携等を一人の管理職が広く担当できる場合があります。

法人規模より、何を任されるかを見ることが重要です。

資格を満たせば将来安泰というわけではない

介護施設・サービスによっては、管理者になるための資格・実務経験・研修等が定められています。

ただし、制度要件を満たすことと、市場で評価される管理経験を持つことは別です。

制度要件は、就任できるかどうかを決めます。

市場価値は、採用・定着、数値、業務改善、複数拠点、DX等をどこまで担えるかでも変わります。

施設・サービス別の管理者要件は、介護施設長・管理者の資格要件一覧|主要サービス別の研修・兼務まで解説で確認してください。

管理職の需要があっても転職条件は個別に見る

将来性がある市場だとしても、どの管理職求人でも良いわけではありません。

  • 施設種別
  • 正式役職
  • 採用・評価・予算等の権限
  • 現場兼務
  • 担当施設数
  • 数値責任
  • 転勤・出張
  • 給与・役職手当
  • 管理者要件

を個別に確認します。

需要があるという情報だけで、転職サービスへ登録する必要はありません。

自分の次のキャリアは将来必要になる経験から決める

ここで確認したいのは、管理職という肩書が残るかどうかではありません。

今後の介護サービス提供体制の中で、どの経験を増やせば環境変化へ対応しやすいかです。

自分の次のキャリアを、現職継続・昇進・転職・本部職から判断したい場合は、介護管理職のキャリア設計完全ガイド|現職継続・昇進・転職・本部職を判断するへ進んでください。

役職の種類そのものを整理したい場合は、介護業界の管理職・役職一覧|リーダー・主任・施設長・管理者・エリアマネージャーを比較で確認できます。

本部職へのキャリアチェンジを考える場合は、介護現場から本部職へキャリアチェンジ|人事・教育・運営企画への道で、現場経験を本部機能へどう変換するか整理してください。

よくある質問

介護管理職は将来なくなりますか?

現時点で、介護管理職が将来なくなると判断できる公的根拠はありません。一方、協働化・大規模化・DX等によって、単施設の人員管理だけでなく、複数拠点、業務改善、数値、DX等へ役割が変化する可能性があります。

介護施設長の求人は今後増えますか?

全国で施設長求人が何件増えるかという公的な将来推計はありません。地域によって介護需要も異なり、施設集約で単施設管理者が減るケースも、複数拠点管理等の役割が増えるケースも考えられます。

AIで施設長は不要になりますか?

一律には言えません。記録・集計・シフト補助等はAIやICTで効率化しやすい一方、導入判断、業務再設計、職員への定着、品質・事故管理等は管理側の仕事として残ります。AIを使って業務を再設計できるかが重要です。

介護業界は2040年まで成長しますか?

全国一律の右肩上がりとは言えません。大都市部では介護需要が増える地域がある一方、一般市では将来減少へ転じる地域、中山間・人口減少地域では需要が低下する地域があります。

人口減少地域でも介護管理職の需要はありますか?

現在も管理職は必要ですが、将来は新規施設を増やす管理より、サービス維持、事業所間連携、人材共有、統合・再編等を担う管理の重要性が高まる可能性があります。

大手介護法人の方が将来性は高いですか?

一律ではありません。大手では複数拠点・本部・DX等を経験しやすい場合がありますが、中小法人では経営者との距離が近く、採用・数値・行政・地域連携等を広く経験できる場合があります。法人規模より担当範囲を確認してください。

介護管理職で身につけるべきスキルは何ですか?

今後の市場変化を考えると、採用・定着、数値・経営、改善・標準化、DX、複数拠点、地域・法人間連携の経験はキャリア資産になりやすいと考えられます。全国共通の必須スキルという意味ではありません。

介護管理職へ転職するなら今がよいですか?

市場に求人があることだけで転職時期は決められません。今の法人で必要な管理経験を増やせるか、希望する役割・権限・働き方が外部求人にあるかを比較してください。転職判断は、キャリア設計や転職判断の記事で整理します。

まとめ|管理職になるより変化を管理できる経験を持つ

介護職員は、2026年度に約240万人、2040年度には約272万人が必要と推計されています。

しかし、この数字は介護管理職の必要人数ではありません。

また、2040年まで介護需要が全国一律に増えるわけでもありません。

大都市部では需要増への対応、一般市では再編・効率化、人口減少地域ではサービス維持・連携が重要になります。

さらに、介護事業者の協働化・大規模化、ICT・AIを含む生産性向上も進みます。

その中で、将来価値を高めやすい管理経験は次の6領域です。

  • 採用・定着
  • 数値・経営
  • 改善・標準化
  • DX
  • 複数拠点
  • 地域・法人間連携

介護管理職という肩書を持てば安泰なのではなく、環境変化を管理できる経験を増やせるかが重要です。

自分の次のキャリアを決める場合は、介護管理職のキャリア設計完全ガイド|現職継続・昇進・転職・本部職を判断するへ進み、今後増やす経験を整理してください。

参考にした主な資料

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