ケアマネと社会福祉士のダブルライセンス|キャリアの広がりを解説

ケアマネと社会福祉士のダブルライセンス|キャリアの広がりを解説

2026年5月時点の情報です。

【この記事でわかること(3秒で解説)】
  • 2資格の補完関係で書類選考の通過率が跳ね上がる
  • 包括・MSW・施設管理職の3つのキャリアが開く
  • 資格名だけでなく「実績とのリンク」が内定の鍵

目次

あなたのキャリア、そのライセンスだけで本当に戦えますか?

ケアマネの資格を持ちながら、もっと活躍できるはずなのに出口が見えない。

そう感じているケアマネや相談職の方から、キャリア相談を受ける機会が増えています。

実務経験を積み、利用者の信頼も得てきた。それでも転職市場に出ると「その経験、うちでは活かせないかもしれない」と言われる。その壁の正体は何か。

私が人事コンサルとして採用現場に関わってきた実感では、ケアマネと社会福祉士のダブルライセンスを持つ人材は、明確に「欲しい人材リスト」の上位に来ます。

この記事では、ダブルライセンスがなぜ市場価値を高めるのか、どのようなキャリアパスが開けるのかを公的データをもとに解説します。ケアマネとしてキャリアの次のステージを考えている方に、具体的な情報をお届けします。


ケアマネと社会福祉士の「仕事上の違い」を正確に理解する

まず前提として、この2つの資格の違いを整理しておきます。混同しがちですが、役割の射程距離が根本的に異なります

ケアマネ(介護支援専門員)は、介護保険制度の中でケアプランを作成し、サービスを調整する専門職です。対象は「介護が必要な高齢者および障害者」に限定され、介護保険というフレームの中で機能します。都道府県の公的資格であり、5年ごとに更新が必要です。

社会福祉士は、国家資格です。生活困窮者・高齢者・障害者・ひとり親家庭など、生活上の困難を抱えるすべての人が支援対象となります。医療・行政・教育など横断的な分野での相談援助が求められるため、知識の守備範囲がケアマネより広いのが特徴です。

つまりケアマネは介護保険の専門家であり、社会福祉士はソーシャルワーク全般の専門家です。

一見重複するように見えて、実は補完関係にあります。この補完性こそが、ダブルライセンスの強みの核心です。

項目 ケアマネ(介護支援専門員) 社会福祉士
資格の種類 都道府県の公的資格(5年更新) 国家資格(更新不要)
支援対象 要介護・要支援の高齢者・障害者 生活上の困難を抱えるすべての人
専門領域 介護保険内でのプラン作成・調整 医療・行政・教育など横断的な相談援助
▼ ダブルライセンスによる相乗効果 ▼
介護の専門性と、制度横断的な課題解決力の両立

なぜダブルライセンスが「採用現場で刺さる」のか

私が人事コンサルとして活動している際に経験した範囲では、施設長クラスや地域包括支援センターの管理職を採用する場面で、ダブルライセンス保持者の書類通過率は明確に高い傾向があります。

理由はシンプルです。

一つの機関でできる支援の幅が広がるからです。

たとえば地域包括支援センターでは、高齢者の総合相談から権利擁護・介護予防ケアマネジメントまで一体的に担います。社会福祉士の専門性(権利擁護・相談援助)とケアマネの専門性(ケアプラン・サービス調整)が求められる職場であり、どちらか片方では機能が分断されます。

採用する側としては「2つの役割を1人で担えるなら、それは単純に生産性が高い」という発想になります。

この点は、複合的なニーズを持つ利用者が増加している現代の介護・福祉現場において、より顕著です。


データで見る「ダブルライセンス人材」の需給ギャップ

ここで公的データを確認します。

地域包括支援センターの人材不足は深刻です。厚生労働省の調査等でも、地域包括支援センターの3職種(主任ケアマネ・社会福祉士・保健師)の採用難が指摘されており、特に主任ケアマネの確保に苦慮する自治体や法人が少なくありません。実際、現場レベルでは欠員補充が追いつかないケースが常態化しています。
(出典:厚生労働省等の業界動向データに基づく)

この状況を受け、2024年4月から地域包括支援センターの3職種(主任ケアマネ・社会福祉士・保健師)の配置基準が柔軟化されました。それでも需給ギャップは縮まっておらず、ケアマネと社会福祉士の両方を持つ人材への需要は構造的に続いています

需要が大きく、供給が少ない。これがダブルライセンス保持者の市場価値が高い本質的な理由です。


ダブルライセンスで開く「3つのキャリアパス」

ダブルライセンスを持つことで、具体的にどのような選択肢が広がるのかを整理します。

キャリアパス ダブルライセンスが活きる理由 将来のポジション
①地域包括支援センター 権利擁護(社福)+ケアマネジメント(ケアマネ)を1人で完結できるため センター長・統括管理者
②医療ソーシャルワーカー 退院支援において、在宅介護サービスの実務知識が即戦力となるため 地域連携室長
③介護施設の管理職候補 生活相談員と施設ケアマネを兼務でき、法人の人件費対効果が高いため 施設長・エリアマネージャー

キャリアパス① 地域包括支援センターの相談職・管理職

最もダイレクトに評価されるのがこのルートです。

社会福祉士は地域包括支援センターの必置職種であり、権利擁護業務や総合相談を担います。そこにケアマネ資格が加わることで、介護予防ケアマネジメントや困難事例への対応まで一体的に関われます。

さらに主任ケアマネを取得すれば、センター内での業務範囲はほぼフルカバーとなります。センター長を目指すキャリアラダーが、実践的な形で見えてきます。

キャリアパス② 医療ソーシャルワーカー(MSW)としての活躍

病院内の地域連携室で働く医療ソーシャルワーカーは、社会福祉士の主要な活躍フィールドです。

退院後の生活設計や在宅サービス調整を担う際、ケアマネとしての実務経験は直接的な強みになります。「退院後の生活設計は任せてほしい」と自信を持って言えるMSWは、医療機関から高く評価されます。

厚生労働省のjob tag(職業情報提供サイト)によると、医療ソーシャルワーカーの有効求人倍率は3.26倍(2025年4月時点)です。明確な売り手市場であり、ダブルライセンスで参入障壁はさらに下がります。

(出典:厚生労働省 job tag「医療ソーシャルワーカー – 職業詳細」)

キャリアパス③ 介護施設での生活相談員+施設ケアマネ兼務

特養や老健などの施設では、生活相談員(社会福祉士が担うことが多い)と施設ケアマネを兼務できる体制が評価されます。1人で2つの役割を担える人材は、中小規模の法人にとって特に魅力的です。

施設長を目指す場合も、社会福祉士+ケアマネのダブルライセンスは「マネジメント候補として見られる」ための根拠になります。


年収の実態:ダブルライセンスで変わるのか?

正直に言います。ダブルライセンスを取得しただけで年収が自動的に上がるわけではありません

ただし、応募できる職種と職場の質が変わることで、結果として年収レンジが広がります

まず現状の数字を確認します。

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、介護支援専門員(ケアマネジャー)の平均年収は約430万円(平均年齢52.8歳)です。月額給与は約30万1,600円、年間賞与は約67万6,700円です。

社会福祉士を含む「その他の社会福祉専門職業従事者」については、厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると年収は約426万円です。

(出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」「令和5年賃金構造基本統計調査」)

両資格単体でのレンジはほぼ同水準ですが、地域包括支援センターの管理職や医療機関のMSW管理職などのポストを視野に入れると、年収帯が上昇する可能性があります

年収よりも重要なのは、交渉力の変化です。複数の職場から評価されるポジションに立つことで、条件交渉の際に「他に選択肢がある」という事実が生まれます。この状態こそが、戦略的な転職を可能にします。


取得する順番と難易度:社会福祉士から入るのが現実的

ダブルライセンスを目指す方によく聞かれるのが「どちらを先に取るべきか」という問いです。

ケアマネをすでに取得しているなら、社会福祉士を目指すルートが現実的です。

ただし注意が必要です。社会福祉士の受験資格を得るためには、指定の養成施設修了(または福祉系大学卒業)が必要です。現場経験だけでは受験できません。

社会福祉士国家試験の合格率は近年上昇しており、2025年実施の第37回では56.3%(受験者27,616人、合格者15,561人)でした。数年前は30%前後で推移していたことを考えると、チャレンジのハードルは下がっています。

(出典:厚生労働省「第37回社会福祉士国家試験合格発表」2025年)

一方、ケアマネ試験の合格率は例年20〜30%前後で推移しており、実務経験5年以上(かつ900日以上)という受験資格の壁も存在します。社会福祉士はケアマネ受験の「特定の国家資格」要件を満たすため、社会福祉士取得後にケアマネを目指すルートは制度的に整合性があります

(出典:厚生労働省「介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況」各回データ)

少し想像してみてください。社会福祉士の国家資格が手元にあれば、「ケアマネ試験の受験資格はすでにある」という状態からスタートできます。これは実務経験のみのルートより制度的に有利です。

取得ルート受験要件の壁合格率の傾向おすすめ度
社会福祉士

ケアマネ
社福取得でケアマネの「法定資格」要件を満たせる社福:約56%(上昇傾向)
ケア:約20%

最も王道で現実的
ケアマネ

社会福祉士
社福受験には養成施設修了等が必要(現場経験のみ不可)ケア:約20%(低水準)
社福:約56%

社福受験要件の確認必須

転職活動で「ダブルライセンス」をどう活かすか

職務経歴書で「落ちる」パターンとは

人事コンサルとして採用面接に関わった際に見えてきた共通点があります。ダブルライセンス保持者の職務経歴書でも、資格の羅列だけで終わっている場合は通過率が低いのです。

評価される職務経歴書には、次の要素が含まれています。

資格とリンクした業務実績の具体化です。「社会福祉士として成年後見申立支援に携わり、年間○件対応」「ケアマネとして担当ケース数○件を管理しながら地域ケア会議を月○回運営」のように、資格が実績の文脈で語られる必要があります。

次に連携先と役割の明示です。医師・看護師・行政窓口などとの連携実績は、多職種連携能力の証明になります。MSWや地域包括支援センターへの応募では特に重視されます。

面接での頻出質問と回答の軸

私がキャリア面談で確認した範囲では、ダブルライセンス保持者への面接でよく出る問いは以下のパターンです。

「2つの資格をどう使い分けていますか?」

この問いに対し「特に意識していない」と答える方が意外と多いです。正しい答えは「ケアマネとしては介護保険サービスの最適化を担い、社会福祉士としては制度の狭間にあるニーズへの権利擁護的なアプローチを担っています」のように、役割の使い分けを言語化できることです。

「なぜ今の職場を離れるのですか?」

この問いに対しては、現職への批判ではなく「より広い支援対象に関わりたい」「権利擁護業務に本格的に取り組みたい」のような前向きな動機を軸に据えてください。ダブルライセンスを取得した経緯と結びつけると、説得力が増します。

エージェントを使うべき場面

労働条件の詳細(夜勤の有無・残業の実態・評価制度の内容など)を面接中に直接確認することは、やや難しい場面があります。

転職エージェントを活用すると、求職者の知らないところでエージェントが事前確認してくれるため「自分では直接聞きづらい情報をスムーズに収集できた」という状態を作れます。特に医療機関や地域包括支援センターへの転職では、給与体系や職種ごとの昇給実績など、公開情報だけでは分からない情報の重要性が高くなります。


実際の採用現場から:ダブルライセンスが評価された事例

(※個人情報保護のため一部設定を変更していますが、実際の採用現場での事例です)

人事コンサルとして関わった採用面接で、ある40代の女性ケアマネが「社会福祉士を取って半年後に転職活動を始めた」というケースがあります。彼女の職務経歴書には「成年後見支援○件」「家族介護者への同行支援○件」といった具体的な数字が並んでいました。

面接で採用担当者が最初に口にしたのは「この実績、うちでは今すぐ活かせます」という言葉でした。

資格は「応募できる入口を増やすカード」です。しかし面接で評価されるのは、その資格を使って何をしてきたかという実績の言語化です。

ダブルライセンスを取得することを決めたなら、同時に資格と連動した実績作りを意識してください。取得後1年間の業務記録が、次の転職活動の最大の武器になります。


そのキャリア、まだ伸びる

ダブルライセンスは、介護・福祉業界におけるキャリアの可動域を広げる選択です。地域包括支援センター・医療ソーシャルワーカー・施設管理職という3つのキャリアパスが開き、採用現場での評価軸が変わります。

現状の年収データを見る限り、ダブルライセンス単体での即時の年収増は保証されません。しかし市場価値が高まることで転職先の選択肢が広がり、条件交渉の余地が生まれるという構造は確かです。

社会福祉士試験の合格率は近年上昇傾向にあります。勉強を始める環境は整っています。

あなたのキャリアは、今の職場だけで完結させる必要はありません。次のステージを見据えるなら、まずは一度、専門家のキャリア相談から動き出してみてください。


ダブルライセンスを取得すれば、今の職場で自動的に給料は上がりますか?

資格手当が追加されることはありますが、大幅な年収アップは難しいのが現実です。年収を上げるためには、ダブルライセンスが必須要件(または優遇要件)となる「地域包括支援センターの管理職」や「医療機関のMSW」などへ、より高い待遇を求めて転職(または社内異動)する戦略が必要です。

現在ケアマネですが、社会福祉士の資格取得にはどれくらい時間がかかりますか?

保有している学歴や実務経験によって異なりますが、一般養成施設(通信課程など)に通う場合、1年〜1年半の学習期間が必要です。働きながら取得を目指す方が大半ですので、まずはご自身の最終学歴から「どのルートで受験資格を得られるか」を確認することから始めてください。

面接で「2つの資格をどう活かすか」と聞かれたら、どう答えるのが正解ですか?

資格を単に並べるのではなく、役割の使い分けを語ることが重要です。「ケアマネとして介護サービスの最適化を図りつつ、社会福祉士の視点で制度の狭間にある方の権利擁護にもアプローチできる」といったように、両者の専門性が補完し合っていることを具体的なエピソードを交えて伝えてください。

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この記事を書いた人

介護事業者向けの人材事業経験を経て、現在は経営コンサルタントとして活動する中小企業診断士。経営者サイドが「喉から手が出るほど欲しい人材」と「評価しない人材」の違いを熟知している強みを活かし、施設長・エリアマネージャー・など主任ケアマネなど、現場リーダー層が市場価値を最大化するためのキャリア戦略を発信中。

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